手術/神経疾患

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進行性脊髄軟化症から命を取り留めたワンちゃん

獣医師の梶村です。
今回は進行性脊髄軟化症になってしまったものの、手術により一命を取り留めたワンちゃんを紹介します。

進行性脊髄軟化症とは、椎間板ヘルニアで最も重いグレードの場合、まれに発生する病気です。
この病気では、椎間板ヘルニアで脊髄が強く圧迫された後、その部分だけでなく前後の脊髄までがどんどん軟化し壊死していきます。
よってはじめは後肢だけの麻痺だったとしても、そのうち前肢も麻痺し、排尿困難や自力での排泄が困難になり、最終的には延髄の呼吸中枢が麻痺して、呼吸困難により亡くなってしまいます。
この病気が恐ろしいのは1週間以内の致死率がほぼ100%であり、また現在の獣医学では確立された治療法がないことです。

今日紹介するワンちゃんは3歳のフレンチブルドックで、今年の夏に後肢が立てなくなったとのことで、当院に来られました。
この時点でグレードで言うと5段階中の4であり、椎間板ヘルニアであった場合、手術適応のグレードであるため、すぐに二次病院でのMRIを勧めました。
無事MRIの予約も取れて、その前にもう一度再診で来てもらったところ、後肢の痛覚が無くなり、肛門の反射も無くなっており、悪化していました。
グレードも5になっていました。

予定通りMRIを撮ってもらったところ…

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第3〜第4腰椎における重度の椎間板ヘルニア、および二次性の広範な脊髄損傷という診断結果であり、進行性脊髄軟化症へと移行している可能性があるということでした。

はじめにお話ししたように、進行性脊髄軟化症であった場合、ほぼ100%数日以内に亡くなってしまいます。
そこで院長や二次病院の先生に相談してみたところ、 現在の症状を治すことは難しいが進行性脊髄軟化症自体は手術で進行を止められる可能性があるという話を聞いて、飼い主様と話をしました。

MRIを終えたその足で、飼い主様に当院に来てもらって…
このままだと数日以内に亡くなる可能性があること、手術をすることで症状は残るが命だけは助かる可能性があること、命が助かっても一生介護やリハビリが必要になるであろうこと…
などの話をしました。
飼い主様は、命が助かる可能性があるなら手術にかけてみたい!一生介護になってもなんとかする!
とのことだったので、一刻も惜しいのでそのまま預かって、夜の手術にふみきりました!

 
院長は進行性脊髄軟化症を止めるための手術を何度か経験していたので、手術自体は安心してすすめていきました。

この先手術画像あり

まずは脊髄まで到達するために、 皮膚を切開していきます。
鉗子で掴んでいる場所が病変部です。
DSCN6930

脊椎まで到達しました。
DSCN6938

ここで脊椎に穴をあけて、脊髄を露出させます。
通常の椎間板ヘルニアの手術では一つの穴をあけますが、進行性脊髄軟化症の手術では複数個穴をあけて減圧します。
DSCN6943

脊髄を露出したところ、色が暗褐色であり(通常は白〜ピンク)、やはり重度の脊髄損傷を受けていたということと、脊髄自体が軟らかく、脊髄軟化症であろうことが分かりました。

椎間板ヘルニアの原因となった、椎間板です。
これも除去します。
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最後に脊髄を覆っている硬膜を切開し、脊髄にかかる圧を減らして終了です。

術後すぐに、肛門の反射は戻りました。
これにより便が垂れ流し状態だったものが改善されました。
しかし予想通り他の後肢麻痺、排尿困難などは残りました。

進行性脊髄軟化症では1週間以内で亡くなることがほとんどなので、術後1週間が勝負です!
なので1週間は入院させて毎日、神経学的検査をして、進行していないかをチェックしました!
毎日、朝来たら亡くなっているのではないかという恐怖はありましたが、飼い主様も毎日面会に来てもらったおかげもあってか、フレブルちゃんは麻痺が進行することなく無事退院できました!

術後、予想通り後肢の麻痺は残りましたが、頑張って水を飲みに来る姿を撮りました。

そして現在、術後2ヶ月ほどになりますが元気いっぱい前足で動きまわっています!
飼い主様も毎日、圧迫排尿、リハビリと頑張ってくださっているようです!

進行性脊髄軟化症は恐ろしい病気です。 
ほぼ100%、しかもあっという間に亡くなってしまいます。
しかしそう診断されてしまっても、諦めることはありません!
獣医療も日々進歩しており、当院では院長も僕も常に最新の知識技術を勉強しています!
事実このフレブルちゃんのように助かることもあるのです!
近い将来、進行性脊髄軟化症はほとんど止められる病気になるのではないかと思っています!

獣医師 梶村


かもがわ動物クリニック

 

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