病気紹介

猫の乳腺腫瘍(乳癌)

病態

猫には左右4個ずつ乳腺があり、その乳腺の細胞が異常に増える病気です。

 

原因の一つとして、性ホルモンの関与が考えられており、早期避妊手術をすることにより乳腺腫瘍になる確率が低くなります。稀ですがオスや猫の避妊手術したメスにもみられることがあります。

 

高齢の猫に発生することが多く、乳腺にしこりが単発または多発性にできます。形、サイズは様々で炎症を伴うこともあります。

 

猫の乳腺腫瘍で約90%は悪性の場合が多く、リンパ節の病変や肺への転移があるかどうかの診断が大変重要です。予後は悪いものが多く、3cmを超える腫瘍であったり、リンパ節病変がある場合は約半年、肺転移がある場合は約数か月の余命と考えられています。

 

一般的に良性・悪性の肉眼的特徴として次のような違いがあります。

良性(腺腫):腫瘍は成長が遅く、周りの組織との境界がはっきりしていて、小さく硬いことが多く、転移しない

悪性(腺癌):腫瘍は成長が早く、周りの組織との境界がはっきりせず、炎症を伴うこともあり、転移する

 

 

診断

問診、視診、聴診、触診(腋窩リンパ節、鼠径リンパ節)をします。

そのほか、全身状態の確認と腫瘍細胞の種類、悪性度、転移の有無を調べるために

・血液検査

・細胞診

・超音波検査

・レントゲン検査(特に肺)

をします。

そして、もちろん切除した場合は、病理検査で確定診断を行います。

 

<病態の分類について >

腫瘍(Tumour)、リンパ節(lymph Nodes)、転移(Metastases)について評価します。それぞれの文字をとりTNM分類とよばれます。

Tは腫瘍の大きさを評価します。

Nは腋窩・鼠経リンパ節の病変で評価します。

Mは転移の有無で評価します。

 

TNMの結果に基づいてステージ分類をします。数字が大きくなるほど、予後は悪くなります。

Ⅰ: 乳腺に限局した1cm未満の腫瘍で、腋窩・鼠経リンパ節の病変や転移がない状態

Ⅱ: 腫瘤の大きさは3cm未満で、リンパ節の病変が片側にある状態

Ⅲ: Ⅱよりも腫瘍の大きさが大きかったり、リンパ節の病変が広範囲にある状態

Ⅳ: 転移が見られる状態

 

治療

肺への転移や全身状態、予後を考慮し外科手術を検討しますが、基本的に猫では、根治的乳腺切除(腫瘍のある一部乳腺ではなく片側の全乳腺摘出手術)が推奨されます。場合によっては、両側の乳腺を切除する場合もあります。

腫瘍の部分のみ切除した場合は、約2/3が再発すると言われています。

腫瘍が小さいうちに切除した方が予後が良く、3cm以上になると80%がすでに遠隔転移があると考えられていますので、早期発見・早期手術が重要です。

 

 

日頃から、猫ちゃんとスキンシップをとり、シコリがないかチェックしてあげてください。

 

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