病気紹介

多飲多尿

病態

多飲多尿とは、薄いおしっこを大量にして、やたら水を飲みたがることです。
24時間の飲水量が、犬猫で体重1kgにつき100mlを超えるなら多飲です。
また多尿は尿比重が犬で1.030以下、猫で1.035以下であれば多尿と判断します。

主な原因

(1)慢性腎臓病

高齢の動物で罹患率が高く、特に猫で主要な死亡原因となります。
ある程度進行すると、慢性腎臓病はそのまま進行し続け、高窒素血症、尿毒症(消化器症状、体重減少など)が出てきます。
また貧血や、高血圧による失明、上皮小体機能亢進症による骨異常も見られるようになります。
治療には皮下点滴、内服薬、食事療法などを行います。 

(2)腎盂腎炎

膀胱からの細菌尿が腎臓に逆流することで腎盂腎炎となることが多いです。
腎盂腎炎の症状は様々で、無症状の場合もあれば、多飲多尿、頻尿、血尿、失禁、発熱、食欲不振、嘔吐、腎臓の痛みなどがあります。
治療には抗生剤を長期的に使います。

(3)子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は子宮内膜の嚢胞性増殖と細菌感染による炎症から、子宮内に膿が溜まる病気です。
発情出血後、1〜2ヶ月で発症することが多いです。
症状は多飲多尿、元気消失、食欲不振、嘔吐、腹部膨満、外陰部からの膿、発熱などです。
治療の第一選択は外科的に卵巣子宮を摘出することです。
ホルモン剤+抗生剤の内科治療もありますが、再発の可能性、治療に時間がかかる、副作用などの問題があります。

(4)肝不全

肝不全とは、何らかの原因により肝臓の機能が大幅に低下した状態です。
症状としては、多飲多尿、黄疸、食後肝性脳症、食欲不振、元気消失、嘔吐、腹水、下痢、皮膚疾患などが見られます。

画像は肝臓の生検です。病理検査に出すことで、肝臓の状態が分かります。

(5)糖尿病

インスリンの不足や抵抗性により高血糖が生じ、様々な代謝異常を引き起こします。 
症状は多飲多尿、多食、体重減少などがあります。
犬では長期の高血糖が続くと白内障になります。
猫では後肢の麻痺が起こることがあります。

治療はインスリン製剤を使用します。 
犬では生涯インスリン注射が必要ですが、猫ではインスリン注射から離脱することができる場合があります。

(6)副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

この病気に関しては、こちらをご覧ください。

https://www.kamogawa-ac.jp/desease/hyperadrenocorticism/

(7)副腎皮質機能低下症(アジソン病)

アジソン病はクッシング症候群と逆で、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモン(グルココルチコイドとミネラルコルチコイド)が不足することで起こります。
ステロイドホルモンの不足により、多飲多尿、虚弱、体重減少、食欲不振、嘔吐、吐出、下痢、血便、徐脈、低体温、痙攣、震えなど、様々な症状を引き起こします。

診断は症状と血液検査にて、行います。
治療はステロイドホルモンを使用します。

(8)猫の甲状腺機能亢進症

この病気は高齢の猫で見られます。
甲状腺が過形成、もしくは腫瘍化することで、甲状腺ホルモンを過剰分泌することで症状が現れます。

症状としては
食欲旺盛だが体重が減少する。
攻撃性が増加する。落ち着きがなくなる。
慢性の下痢や嘔吐が見られる。 
頻脈、心肥大が見られる。 
などがあります。

治療は抗甲状腺薬、食事療法、外科的治療があります。

(9)原発性アルドステロン症

副腎腫瘍がアルドステロンを過剰に分泌することにより起こります。
犬猫ともに稀な病気です 。

症状としては多飲多尿、高血圧、眼底出血、中枢神経症状、心血管障害などが起こります。
低K血症と副腎の腫大が診断のきっかけになることが多いです。

治療は腫瘍の外科的切除や、内服薬を投与します。

(10)高カルシウム血症

高カルシウム血症は腎臓の尿濃縮能を低下させることで、多飲多尿となります。
軽度の高カルシウム血症は無症状ですが、重度になると多飲多尿、興奮、震え、過敏、嘔吐、食欲不振などが出てきます。
重度の高カルシウム血症が持続することで、腎不全にもなります。

高カルシウム血症となる原因は様々です。
原発性上皮小体機能亢進症、悪性腫瘍、ビタミンD中毒、腎性続発性上皮小体機能亢進症、副腎皮質機能低下症、猫の特発性高カルシウム血症、成長期などがあります。

治療は原因となっている病気を治すことです。
支持療法として、皮下点滴、利尿剤、グルココルチコイドなどがあります。

(11)尿崩症

中枢性尿崩症は抗利尿ホルモン(バソプレシン)が何らかの原因で合成、分泌できなくなることで多飲多尿を引き起こします。
原因は頭部への外傷、視床下部や下垂体の腫瘍が多いですが、原因が分からない場合もあります。
治療はホルモンを補充します。

腎性尿崩症は、腎臓の抗利尿ホルモン(バソプレシン)に対する反応が低下することで起こります。
原因は慢性腎臓病、糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症が多いです。
治療はそれぞれの原因疾患を治療することです。

(12)医原性(グルココルチコイド投与)

グルココルチコイドの副作用として、多飲多尿が見られます。

(13)心因性多飲

比較的若い犬で見られ、多飲により多尿が起こります。
他の多飲多尿の原因を除外することで、診断します。
原因は不明ですが、ストレスが関与していると考えられており、腎臓機能や内分泌機能は異常がありません。

この症状は比較的気付きやすいと思うので、怪しいなと思ったら、まず飲水量を測ってみてください。
また尿検査も非常に有効ですので、病院に尿を持って来て検査しましょう。

関連する本日の一症例ページ