ノミ・マダニ・フィラリア

命を奪う病気を運ぶ「小さな虫」

ノミ、マダニ、蚊(フィラリア)は、人類も含めた動物にとって、看過できない危険な生き物です。これらの虫が関係する病気は、時に命を奪う重大なものが含まれています。すでに動物を飼っている方にとって、これらの予防は常識かもしれませんが、初めて動物をお迎えする方は意識の切り替えを行ってください。
悪いことに、ここ近年の亜熱帯化や、都市部などに存在する1年を通して温かい環境の存在によって、これらの虫は冬場にでも姿を現します。ピークシーズンの予防は当然として、常日頃から気を抜かずに注意を怠らない心構えが肝心です。
ノミ・マダニ・蚊(フィラリア)についての基本情報をしっかりと身に着け、正しい心構えを持って行動し、悲しい病気から大切な動物を守りましょう。

ノミ・マダニ

ノミ・マダニは吸血により動物にストレスを与えるだけでなく、様々な病気を媒介し健康上重大な問題を引き起こす危険な虫です。

動物への被害だけでなく、後述の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などのノミやマダニの吸血により人間に移る病気も存在します。
散歩中に体に付いてしまう他、人間が家に持ち帰ってしまう可能性もあるため、室内飼いのわんちゃんや猫ちゃんにも予防は重要です。

ノミの特徴

ノミは、室内外いずれの環境でも生息できます。驚異的なジャンプ力を持ち、体温や二酸化炭素を感知して動物に跳びつき吸血します。

ノミによる健康病被害例
ノミアレルギー性皮膚炎
犬に強烈な痒みを起こします。
サナダムシ症(瓜実条虫症)
ノミを口から飲み込むことで寄生虫が動物や人のお腹に寄生します。
猫ひっかき病
ノミにより細菌に感染した猫に引っかかれたり噛まれたりすることで
人に発熱やリンパ節の腫れを引き起こします。

マダニの特徴

草むらや葉の裏などに生息し、散歩中などに動物に付着します。 口器という鋸状のくちばしを皮膚に差し込み、さらに接着剤のような物質を分泌して皮膚に固着し吸血します。

マダニによる健康病被害例
バベシア症
犬に重度の貧血を起こします。
ダニ麻痺症
マダニの唾液に含まれる成分により神経障害が起きます。
日本紅斑熱
マダニの吸血により感染し、人に発熱や頭痛を起こします。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

SFTS症例の届け出地域(2022年7月31日)

マダニがウイルスを媒介して感染する病気、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)が、西日本を中心に猛威をふるっており、多くの人の死亡例が報告されています。猫ちゃんからの感染報告もありますのでご注意ください。
※SFTSは2011年に発表された新しいウイルスによる感染症です。死亡率は6.3~30%と報告されており、現在有効な治療法はありません。

死亡数の年次推移(2022年7月31日)
2017年8月のニュースから

2017年8月末、SFTSによって死亡していた患者が、同ウィルスに感染していたと思われる野良猫に咬まれたことで感染した疑いが強いと、厚生労働省からの発表があったことが報道されました。
ポイントは、人間がマダニに吸血されてウイルスに感染したのではなく、マダニに吸血されウイルスに感染した猫に咬まれて感染したと言う点です。ノミ・マダニへのさらなる注意が必要です。

動物の健康だけでなく、
人の健康を守るためにもノミ・マダニの予防を徹底しましょう!

ノミ・マダニの予防期間

マダニはあらゆる気温、気候に適応して生息が可能です。またノミは冬場でも13℃以上の室温で生息が可能です。
つまり、夏だけでなく冬にもノミ・マダニに感染するリスクがあるということです。

当院では年間通しての予防を推奨しています

フィラリア(蚊)

フィラリア症とは、蚊に刺されることにより感染する寄生虫症です。
犬の体内にフィラリア(犬糸状虫)が入りこみ、成長したそうめん状の虫が肺動脈や心臓に寄生することで、命に関わる症状を起こす病気です。

フィラリア症の特徴

特徴1. 命に関わる病気

犬フィラリアは犬体内で成虫になると最大30 cmにもなる糸状の寄生虫です。
心臓や肺動脈に寄生することで咳や呼吸困難を起こしたり、血液の流れを妨げ心臓に負担をかけます。放置すると死に至ることがあります。

特徴2. どんなワンちゃんネコちゃんにもかかるリスクがある

フィラリア症は蚊刺されることにより感染します。
年齢、性別、体調にに関わらず、すべてのワンちゃんがかかるリスクがあります。
マンションの高層階に住んでいる完全室内外のネコちゃんも油断しないでください。エレベーターに乗ってきたのか? あるいは洋服の裾にくっついて一緒に入ってしまったのか不明ですが、感染例が報告されています。

特徴3. 治療に危険をともなう

フィラリア症の治療は、いずれの方法をとっても体に負担がかかり、危険を伴います。

  • 薬で駆除:成虫の死骸が血管に詰まるなどして重篤な症状が出る場合があります。
  • 手術:首の血管から特殊な器具を挿入して心臓から成虫を取り出します。
  • 対症療法:積極的な治療をせず、症状を軽減する処置をします。
特徴4. 100%予防することができる

正しく予防することにより、100%確実に予防することが可能です。

フィラリア症は一度かかってしまうと放置しても治療しても命に関わります。
大切な家族のために確実に予防してあげましょう!

フィラリアの発育環境

1. 健康犬を蚊が吸血<この段階の幼虫を予防薬で駆除します!>

蚊が犬を吸血する時、感染幼虫が犬の皮膚から侵入します。

2. 犬の体内で成長<この段階の幼虫を予防薬で駆除します!>

犬の皮下組織で脱皮を繰り返しながら70日前後かけて成長します。

3. 心臓に移動

犬への感染後120日前後で成長したフィラリアが血管内に侵入し、心臓や肺動脈へと移行します。

4. 成虫が子虫を産む

心臓や肺動脈に寄生した成虫がミクロフィラリアを産み、末梢血中にミクロフィラリアが現れます。

5. 感染犬を蚊が吸血

ミクロフィラリアが蚊の体内に入ります。

6. 感染幼虫

子虫は蚊の体内で感染幼虫に発育します。

フィラリア症の予防時期

フィラリアの予防期間は 5月〜12月が基本です、ただ、日本の亜熱帯化や温かい都市部の地下環境などによって、地域によって変わりますが蚊の生息は1年中確認できてしまう状況にあります。この環境を考慮しますと、年間を通した予防が必要と言えます。

当院でもノミ・マダニ予防と合わせて
フィラリア予防も通年で行う
飼い主様が増えています。

ネコのフィラリア症

フィラリア症は犬だけの病気だと思っていませんか?
フィラリアを持った蚊が猫を吸血すると、猫もフィラリアに感染します。実際に、10頭に1頭の猫ちゃんがフィラリアの幼虫に感染しているという調査結果が出ており、室内生活でもフィラリア症に感染する可能性があります。感染すると咳や呼吸困難、吐き気などの症状があらわれ、犬と同様命に関わる重篤な症状を引き起こします。
ワンちゃんと異なり、猫ちゃんのフィラリア症は診断法や治療法がいまだ確立されておらず、しっかりと予防(駆虫)を行うことが最良の対処法となっています。

ノミ・マダニ予防と合わせてフィラリアを予防できる猫のお薬があります。
しっかり予防してあげましょう!

予防薬一覧

フィラリア予防薬
イベルメック
(美味しく食べるお肉タイプ)
ノミ・マダニ予防薬
ネクスガード
(美味しく食べるお肉タイプ)
エフィプロデュオ
(背中にたらすスポットタイプ)
フィラリア・ノミ・マダニ総合予防薬
ネクスガードスペクトラ
(1つですべてOKのお肉タイプ)
クレデリオプラス
(嘔吐しにくくなり
美味しくなった1つですべてOKの
錠剤タイプ)

フィラリア・ノミ・マダニ総合予防薬
内部寄生虫も予防
レボリューションプラス
(背中にたらすスポットタイプ)
内部寄生虫も予防
ブロードライン
(背中にたらすスポットタイプ)
※アルコールフリー