精巣腫瘍
病態
精巣を構成する細胞が異常に増えます。ほとんどが良性腫瘍ですが、まれに悪性も見られます。
潜在精巣での腫瘍の発生確率が高いことは大変重要な素因です。
精巣の腫瘍は3種類がよく知られており、セルトリ細胞腫、セミノーマ(精上皮腫)、間質細胞腫があります。
臨床的に症状が重いセルトリ細胞腫の報告が一番多くありますが、2008年海外の報告では、232頭の亡くなった犬の精巣を検査した結果、腫瘍は27%に見つかり、そのうちの50%が間質細胞腫、42%が精上皮腫、8%がセルトリ細胞腫だったとの報告があります。
意外と、去勢してない犬には、精巣の腫瘍が隠れているようです。
それぞれの腫瘍の特徴としては
<セルトリ細胞腫>
精細胞を支持するセルトリ細胞の腫瘍化です。通常は片側のみに発生し、また潜在精巣(陰睾)に発生しやすいタイプです。約30%にエストロジェン(女性ホルモン)の分泌過多による両側性の脱毛や乳腺発達、もう片方の精巣の萎縮、前立腺異常、貧血などが認められ、転移の可能性もあるので注意が必要です。
<セミノーマ(精上皮腫)>
精子を生成する精細胞由来の細胞の腫瘍化です。潜在精巣や下降した精巣に発生し、セルトリ細胞腫や間質細胞腫と併発することもあります。まれに転移し、組織学的には潜在的に悪性とされていますが、切除手術後の予後は良好のことが多いです。
<間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫)>
テストステロン(男性ホルモン)を分泌するライディッヒ細胞による腫瘍性病変です。ほとんどが下降した精巣に発生し、転移はなく、あまり臨床症状として問題にならないために老齢の未去勢の犬で偶然発見されることが多いです。
診断
問診、視診、触診をします。
精巣が正常な位置で正常な大きさであるか診察します。
一番重要なのは、精巣が下降している(隠睾・潜在精巣ではない)かどうかです。
腹腔内にある場合はエコー検査、レントゲン検査をすることもあります。
切除した腫瘍は病理組織検査をし、腫瘍の種類や悪性度を調べます。
治療
外科的に切除します。
精巣の腫瘍は良性のことが多いですが、悪性の場合は放射線療法なども検討可能です。
上記のように去勢していないオスでは、精巣の腫瘍の発生がみられるので、子供を産ませないのであれば早期に去勢を実施することをお勧めします。