神経疾患
椎間板ヘルニア後のリハビリテーション
獣医師の梶村です。
以前、院長が椎間板ヘルニアの手術の記事をアップしましたが、今回は椎間板ヘルニアのリハビリテーションについて説明します。
リハビリテーションの目的はQOLの改善、回復の促進、筋肉や神経の機能回復、起立及び歩行機能の改善、麻痺の改善、関節可動域の維持及び改善などです。
リハビリテーションの種類としては、マッサージ療法、他動運動、補助下での自動運動、自動運動、物理療法などの分けられます。
内科療法か外科療法か、また動物の重症度によって、選択すべき方法は変わってきます。
⑴マッサージ療法
血流及びリンパ流の改善、筋肉の張りや凝りの改善、皮膚感覚の改善、筋萎縮の抑制などの効果があります。
・軽擦法
体表を軽く擦る。
・揉捏法
皮膚や筋肉を揉む。
・強擦法
体を強く揉むように擦ったり、回転させる。
・振動法
肢全体を振動させる。
・叩打法
リズミカルに筋肉を叩く。
⑵他動運動
人が動物の身体の一部を動かして、機能回復を図る方法。
関節可動域の改善、筋及び腱の伸長、神経や筋肉の感覚や機能向上を目的に行う。
・関節のストレッチ
肢を伸ばした状態で30秒程維持する。
・屈伸運動
全ての関節を屈伸する。
・自転車漕ぎ運動
自転車を漕ぐように麻痺肢を動かすことで、歩行パターンを再習得させる。
・引っ込め反射の誘発
神経と筋肉の連動性を高める。自力起立できない動物の筋力の維持に有効。
⑶起立及び歩行訓練(1日に2、3回)
・起立訓練
肢を通常の起立している位置に着肢させてから、その体勢を維持する。
麻痺肢に力が入るようになってきたら、徐々に麻痺肢への体重負重を増やしていく。
・歩行訓練
自力での起立が1〜5分以上可能となってから開始する。
起立が十分にできない状態で行うと前肢のみで歩くことに慣れるので、後肢の機能回復を目的とする
場合は起立できるまで行わない。
タオルや車椅子を用いて行う。
・ダンス運動
体を支えて後肢のみで前後左右に歩行させることで、後肢のバランス感覚を鍛える。
⑷自動運動
動物自身が意識下で筋肉や関節を動かして行う運動。
力強い歩行を再び獲得することが目的。
・引き紐での歩行
リードを短く持って、ゆっくりとした速度で歩かせる。
1回につき2〜3分から開始して、最長で1回60分まで行う。
・水泳
水の抵抗力や浮力を利用した運動療法。
水温は25℃〜30℃に設定。
ウォータージャケットを着用し、まずは2〜3分程度から開始し、徐々に時間を延ばす。
水の中でマッサージをしたり、自転車漕ぎ運動を行うことも有効。
⑸物理療法
電気、光線、温熱、超音波などのエネルギーを用いて、症状を緩和させる。
・温度療法
疼痛の緩和に有効。
発症または手術後3日間は患部を冷やし、それ以降は患部を温める。
以上リハビリテーションについて説明しましたが、家でもできることから、特別な機器がないとできないものまで様々です。
またリハビリテーションは適切な時期に適切な方法で行わないと逆に悪化してしまう可能性があります。
よってリハビリテーションを行う際は獣医師とよく相談してから行う必要があります。
愛犬のモコも過去に椎間板ヘルニア(グレード1)疑いで治療しました。
ペキニーズも椎間板ヘルニアになりやすいので注意しましょう。
獣医師 梶村