シニアケアと病気

この25年で約2倍になった動物(犬・猫)の平均寿命

一般社団法人動物フード協会の資料によると、平成28年の犬全体の平均寿命は14.36歳、猫全体の平均寿命は15.04歳とのことです。
ただ、この数字は全体を平均化したものなので、すべての犬や猫には当てはまりません。
例えば犬の場合、超小型犬や小型犬の寿命は大型犬よりも長く、また猫の場合、家の外に出ない「室内飼い」猫の平均寿命は15.81歳に対して家の外に出る「外飼い」猫の平均寿命は13.26大きな差がありました。参考までに、野良猫の寿命は4~5年と言われています。

また、2016年に発表された東京農工大と日本小動物獣医師会の大規模調査では、90年当時の寿命は犬8.6歳、猫で5.1歳だったのに対し、2014年時点では、犬13.2歳と猫11.9歳との調査結果が公表されています。
いずれにしましても、犬・猫ともに寿命が延びていることに違いはありません。
動物を大切な家族の一員として迎え入れられている飼い主様にとって、少しでも長く一緒に時を過ごしたいと思うのは自然です。そのために知っていてほしいこと、やってあげたいことをまとめました。いつまでも健康的にいてもらえるよう、

人間と比較した目安の年齢

犬の年齢換算

犬は人と比較すると、とても早く成長します。
成長の仕方は、一般的に小型、中型犬、大型犬によって違います。
小型、中型犬は成犬になるまでの成長が早く老化が遅い、大型犬は成犬までの成長が遅く老化が早い、と言われています。
老化は、小型・中型犬では7歳ごろから始まり、大型犬では5~6歳ごろから始まると言われています。

猫の年齢換算

猫の成長も、人と比較するととても早いです。厳密には生まれ月によって多少変わりますが、猫が1歳半をむかえる頃には、人間だともう成人です。
一般的には、0~12ヵ月以下を幼猫、1~7歳未満を成猫、7歳~を高齢猫、17歳以上の猫が長寿猫と言われています。

6歳を超えたワンちゃんネコちゃんは、様々な病気にかかりやすくなります。定期的な健康診断によって、恐ろしい病気から守ってあげましょう。当院でも、ワクチン接種の際などに、一緒に健康診断をされる方が増えています。

健康診断ページへ

シニア犬・シニア猫がかかりやすい病気

腫瘍(がん)

人と同様年をとるにつれて、がんのリスクも上昇し、死亡率の上位を占めます。特に、7歳を超えた頃から急激にがんの発症率は上昇します。リンパ腫、肥満細胞腫、乳腺腫瘍(乳がん)、血管肉腫、組織球肉腫、口腔内腫瘍、悪性黒色種(メラノーマ)など様々な腫瘍(がん)がみられます。 詳しくは犬と猫のがんについてのページをご覧ください。

心臓病

心臓の筋肉や弁に変性がみられ、血液の循環障害が起こります。特に、小型犬では僧帽弁閉鎖不全症という病気がよくみられます。大型犬の拡張型心筋症や猫の肥大型心筋症なども注意が必要です。心臓病の初期症状はわかりにくく、「昔より疲れやすい」、「昔より歩きたがらない」など加齢による変化とあまり区別がつかないこともあるため注意が必要です。シニア期に入ったら一度聴診・超音波検査などを行い、早期発見を心がける必要があります。

腎臓病

加齢に伴い腎臓の構造と機能が徐々に低下していきます。主な初期症状としては、飲水量の増加があげられます。
特に高齢猫ではよくみられ、10歳前後の猫の10頭に1頭、さらに15歳にもなると3頭に1頭が腎不全に罹っていると言われています。日頃から飲水量や尿の量に注意してください。

関節の病気(変形性骨関節症など)

関節の軟骨や周囲組織に変化がみられ、関節炎が起こります。大型犬では股関節や肩関節に、小型犬では膝関節に多くみられます。また、猫の場合は特に症状がわかりにくいことが多く、加齢による変化とあまり区別がつきません。最近の報告では5歳以上の猫の約80%に、10歳以上の猫のほぼ全頭に変形性骨関節症が潜んでいると言われています。

歯の病気(歯周病、口内炎など)

歯石の付着、また唾液の量が減ることで歯周炎が進行します。たかが歯と思われがちですが、歯周病菌が心臓病・腎臓病・肝臓病、肺炎、膵炎などを引き起こすことがあります。詳しくは、歯科についてのページをご覧ください。

ホルモンの病気(副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)

脳下垂体、甲状腺、副腎などのから分泌されるホルモンは、生命の維持に欠かすことのできない大切な役割を担っています。これらの臓器に何らかの異常が起きて、ホルモンの分泌が増えすぎたり減りすぎたりすると、体にさまざまな不調が起こります。
犬では副腎皮質機能亢進症(クッシング症)、甲状腺機能低下症が多く、猫では甲状腺機能亢進症がみられます。
ホルモンの病気の特徴として、症状がさまざまで異常であると気づきにくいということがあります。 よく食べる、食が細い、肥満、体重減少、活発、あまり動かない、水よく飲むなども症状の一つです。
例えば、甲状腺機能低下症などは、おとなしいや肥満なども症状の一つで、「この年になるとやっぱり昔ほど動かないですよねえ」、「運動しないからポッチャリしてきてるんですよねえ」と思われている場合も少なくないものです。

生殖器の病気(子宮蓄膿症、前立腺疾患など)

子宮蓄膿症(♀)は避妊していない6歳以上の女の子によくみられ、放置すると死亡率の高い病気です。発情(生理)後に、水をよく飲む、元気が無い、食欲が無い、お腹が膨らんできたなどの症状が見られる場合は注意が必要です。特に、飲水量に注意して下さい。
前立腺肥大(♂)は去勢していない6歳以上の男の子にみられるもので、排尿障害を引き起こす場合があります。
いずれの病気も避妊・去勢手術により防ぐことが可能です。

痴呆

ヒトに痴呆(現在では認知症と呼ばれる)があるように、犬にも痴呆というものがあり、その症状には下記のようなものがあります。

  • 怖がりになった
  • 夜起きている時間が長い
  • すぐ隠れるようになった
  • 遊びに誘っても飛びつかなくなった
  • よく吠えるようになった
  • 睡眠リズムが変わった
  • うなることが増えた
  • 昼夜逆転生活を送っている
  • 攻撃的になった
  • 部屋の隅で動けなくなっていることがある
  • 遊ぶ時間が減った
  • トイレを失敗するようになった
  • オモチャへ興味を持たなくなった
  • 日中ボーっとしている時間が多くなった
  • よくあくびをしている
  • 昼間寝ていることが多い
  • 飼い主を避けるようになった
  • 撫でようとしても嫌がられる

シニア動物の治療

すべての飼い主様が大切な動物に一日でも長く”健康”でいて欲しいと願っていると思います。シニア期の治療において重要なことは、『ヘルススパン(健康寿命)』をより長くすることです。ヘルススパン(健康寿命)とは、それぞれの動物たちが介護の必要もなく、痛みや不快もなく、幸せに暮らせる期間のことを指しています。

もちろん、「寿命=健康寿命」のようにすることがBESTで、その両方を延ばす事ができれば言うことはありません。ただし、場合によっては単にライフスパン(寿命)を延ばすこと以上にヘルススパン(健康寿命)を延ばすことの方が重要な場合があると考えています。

後悔しない看取りのために

当院では、デイケア・ターミナルケアにも取り組んでいます。
寿命から健康寿命を差し引いた期間、おそらくこの時期には少なからず飼い主様の助け・補助が必要になってくる期間です。
食事の管理や排便排尿の管理、運動の補助、もし寝たきりになった場合は床ずれ(ジョクソウといいます)に注意する必要がありますし、視力・聴力が極度に低下している場合は、ゆっくりと一定の順番で触ってあげるなど、その子にあったケアが必要になります。

“もう歳だからしょうがない”ではなく、“歳だからこそ”残された生活をどれだけ充実させてあげられるかを考えてあげて下さい。
動物を最期まで責任を持って看取るということは、肉体的、精神的、そして経済的にもとても大変なことだと思います。
しかし、それができるのはやはり今までずっと一緒にいた飼い主様しかいないのです。

  • 高齢なので外に連れて行くのも心配
  • 仕事をしているので日中だけ介護をして欲しい
  • 用事ができてしまうけれど、この子を置いていくのは心配
  • 少しだけ介護に疲れてきた

当院では、そんなお悩みをやわらげ、大変な時期にサポートできるよう、
自宅へのお迎え・病院での一時お預かり・往診(自宅での治療)などを行っています。