犬と猫のがん

これからしてあげられることを一緒に考えましょう

犬猫の死因は、今や人間と同じように、がんによるものトップになっています。アメリカの研究では、おおよそ3分の1ががんで亡くなるとも言われています。
いろいろな見解がありますが、ある意味これは悪いニュースではありません。このようにがんが増えているのは、犬や猫を家族のように大切に育て、定期健診やワクチン接種を行った結果、寿命が劇的に伸びたことが関係していると言えるからです。
生き物は、正常な状態でもがん細胞が毎日発生します。若いうちは免疫が強くがんになりにくいのですが、長生きすれば免疫が落ちてがんになる可能性が高まります。

がんになったことはとても悲しいことですが、視点を変えて見てみれば“しあわせ病”とも言えるケースがあるかもしれません。
当院では、外科手術から抗がん剤までフルラインナップでがん治療に取り組んでおり、さらに「緩和治療」にも力を入れています。
がんの種類や病状にもよりますが、進行を遅らせ、痛みを和らげる治療があります。
ご家族にとっては簡単に割り切れないことばかりだと思いますが、そのお気持ちも含めて私たちは受け止め、最善を尽くします。
これからしてあげられる最善のこと、一緒に考えていきましょう。

かもがわ動物医療センターでは「免疫療法」「温熱療法」「高濃度ビタミンC点滴療法」「レーザー治療」といった、がんの緩和治療に積極的に取り組んでいます。

がんの緩和治療の詳細へ

人間のがんより進行が早い「犬猫のがん」

がん細胞とは、自分自身の増殖をコントロールできなくなり、かつ転移を引き起こす可能性を秘めた細胞のことです。良性と悪性という言葉をよく耳にしますが、良性腫瘍とは転移をしないもの、転移をする腫瘍が悪性で、一般的にがんと呼ばれます。
犬猫のがん細胞は人よりも増殖しやすい性質があります。驚くことに、ヒトのがん細胞の倍加時間(いわゆる、分裂増殖にかかる時間)が30日であるのに対して、犬のがん細胞は2~7日と短期間です。つまり、人よりも進行が早いため、病院での定期的な検診や自宅での危険サインを見逃さないことが必要です。
特に、6・7歳以上の動物は、健康に過ごしていても年に1~2回の健康診断をおこなうことをお勧めします。

犬・猫 死亡原因病気TOP10

    1. 1位 がん 54%
    2. 2位 心臓病 17%
    3. 3位 腎不全 7%
    4. 4位 てんかん発作 5%
    5. 5位 肝臓疾患 5%
    6. 6位 胃拡張・胃捻転 4%
    7. 7位 糖尿病 3%
    8. 8位 アジソン病 2%
    9. 9位 クッシング病 2%
    10. 10位 突然死 1%
    1. 1位 がん 38%
    2. 2位 腎不全 22%
    3. 3位 猫伝染性腹膜炎 10%
    4. 4位 心臓病 7%
    5. 5位 肝臓病 6%
    6. 6位 猫エイズ 6%
    7. 7位 猫白血病 5%
    8. 8位 甲状腺機能亢進症 3%
    9. 9位 肝臓病 2%
    10. 10位 ウイルス性呼吸器感染 1%

出典:日本アニマル倶楽部「犬・猫 死亡原因・病気TOP10」

良性腫瘍と悪性腫瘍の違い

がん組織の足は長く、カニやタコのように細胞は伸びており、その周辺には肉眼では確認できないがん細胞が広がっています。
そして進行するにつれて脈管浸潤が起こり、転移を起こします。

「がん」の診断方法

腫瘍の診断方法

  1. 細胞診
  2. ツルーカット生検
  3. 切除生検

この中で特に細胞診の手技は簡単で、通常は全身麻酔も必要なく、
10分ほどあれば院内で診断が可能です。

「がん」の治療法

外科療法【手術】(局所治療)

腫瘍がある場所に限局した治療です。
転移を起こしていなければ根治、つまり治すことが可能な効果的な治療法です。
ただし、手術時に浸潤・転移している可能性がある場合は、がん細胞を減らすという緩和的目的になります。
当院では、高齢動物の麻酔リスク軽減のため、超音波手術システムSONOSERG(ソノサージ)を使用しております。

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化学療法【抗がん剤】(全身治療)

抗がん剤を用いてがん細胞を破壊する治療法です。
リンパ腫のような血液のがんには最も効果的な治療法になります。
その他、外科手術後の顕微鏡レベルのがん細胞を攻撃するための補助的な治療としても使用します。

放射線療法(局所治療)

放射線に感受性のある腫瘍で、外科手術が困難な場合に照射をおこないます。
当院には放射線照射装置はありませんので、大学病院等の施設に紹介させていただきます。

緩和治療

初期のがんや取りやすい位置のがん、転移の可能性がないがんの場合、外科手術や抗がん剤などの治療が第一選択しとなりますが、それ以外のがんの場合、進行を食い止めたり小さくしたりすることが肝心です。
当院では、免疫細胞療法、高濃度ビタミンC点滴療法、温熱療法、レーザー治療など、人間の医療で注目され普及しているがん治療を応用した治療を行っております。

  • 免疫細胞療法(全身治療)

    自身の血液中の免疫細胞を体外で培養・増殖させ、点滴や注射で体内に戻す治療法です。他のがん治療をするには身体的負担が大きい場合などに行われます。

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  • 高濃度ビタミンC点滴療法(全身治療)

    抗酸化物質であるビタミンCが持つ強い酸化作用を誘導し、がん細胞を殺す治療法です。従来のがん治療とは異なり、ほとんど正常細胞にダメージを与えることはありません。

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  • 温熱療法(全身治療・局所治療)

    がん細胞が熱に弱い性質を利用した治療法で、特にがんが体の表面に出ているケースで力を発揮します。体の負担が少なく、メラノーマ、乳癌、肥満細胞腫、血管周皮腫、肛門周囲腫瘍などの多くの症例に適用されています。

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  • レーザー温熱治療(局所治療)

    かもがわ動物医療センターにあるレーザーは、切除手術に使用するだけでなく、体内外の臓器に発生した腫瘍を温めることが可能です。レーザー温熱療法などと呼ばれる治療法で、動物に負担をかけない安全ながん治療法のひとつです。

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