全身に影響を及ぼしかねない、危険なお口のトラブル
ワンちゃんの3頭に1頭は歯周病にかかっていると言う話、ご存知でしたでしょうか?
歯周病は、歯肉を含む歯周組織の炎症を意味します。
歯磨きなどの日常ケアを行わなければ歯垢や歯石がたまり、歯周病の原因となる細菌が増殖して歯周病を引き起こします。
歯周病が酷くなると歯を支えることができず歯が抜けていくだけでなく、顎の骨が溶けて穴が開いたり、物を食べた時に顎の骨が折れることもあります。
さらに歯周病菌が血流にのって全身を巡り、全身の臓器に影響を及ぼすこともあります。
もちろんワンちゃんだけでなく、ネコちゃんも同じです。
健康で長生きしてもらうためにも、お口の中の健康にも気を配ることが必要です。
歯肉炎
歯肉炎になると、歯茎が赤っぽく腫れてきます。食事の際に歯ぎしりをしたり、口臭がきつくなったりします。
原因は、歯周ポケットにたまった食べかすに細菌が繁殖することが主なのですが、その他にもさまざまな原因があります。これと決めつけず、獣医師と相談して各種検査を受けて下さい。場合によっては抜歯が必要なケースもあります。
乳歯遺残
乳歯遺残は、乳歯が永久歯にうまく生え変わらずに、乳歯が残ってしまった状態のことを言います。
乳歯が残ってしまっていると、歯周病の原因となる歯垢や歯石が付きやすく、歯肉炎になりやすくなってしまいます。
歯瘻(しろう)
歯瘻は、歯の根元に溜まった膿が顎の骨を溶かし、口や眼の下の皮膚などに穴をあけてしまう病気です。歯周病菌などが主な原因となっています。
口の中に穴が空く場合を内歯瘻、皮膚にま穴をあけてしまう場合を外歯瘻と呼びます。いずれにしても大至急ご来院ください。
口鼻瘻管(こうびろうかん)
こちらは、膿みが上あごの骨を溶かして鼻腔内に穴を空けてしまったものです。口と鼻が貫通してしまっているため、鼻水や鼻血、くしゃみが止まらないなどの症状がでます。鼻水とくしゃみが止まらない際には、この病気の可能性もあります。重篤な症状になると後遺症や命の危険もありますので、すぐにご来院ください。
こんな子は歯周病の可能性があります
- 歯垢や歯石がついている
- 口の臭いが気になる
- 歯肉から血が出る
- 硬いものが食べられない
- 口周りを触ると嫌がる
歯周病の進行過程
根尖周囲病巣について
歯周病を放っておくと、根尖周囲病巣に進行していきます。
根尖部とは、歯肉の中に入っている歯の根っこ部分のことで、この部分の病気を「根尖周囲病巣」と呼びます。
根尖周囲病巣は、進行すると病巣が周りの組織に波及し、顎の骨が溶けたり歯肉や頰の皮膚に穴があいてしまうなどの症状が現れることがあります。早期に発見し、必要に応じて抜歯を行うことが重要です。
迅速かつ確実な、ブルーライトによる歯石チェック
歯石は、目に見えにくく付着している場合もあります。
当院ではブルーライトを使った、丁寧な検査を行っております。
ブルーライトを当てると、歯石は写真のようにピンク色に光ります。
※この写真は、麻酔をかけている子の様子となっていますが、麻酔をかけないでも簡単に検査ができます。
歯周病・根尖周囲病巣の診断
当院では歯科用レントゲンを導入しています
歯科用レントゲンは、通常のレントゲンより歯を詳細に撮影することが可能です。
歯科用レントゲンを撮ることで「根尖周囲病巣」という、歯肉の中に隠れている部分の病気を診断することが可能です。普通のレントゲンに比べ、根尖部の膿瘍や嚢胞、腫瘍などをより詳細に撮影し評価することができます。
通常のレントゲンで口元を撮影したものです。これでは根尖部(歯肉の中にある歯の根っこの部分)が見えにくく、左右の歯が重なり合って写ってしまい、詳細な評価が難しいです。
またこれ以上アップで撮影することができないため、細かい部分を見るにはこの画像をズームするしかありません。
通歯科用レントゲンだと一つ一つの歯をここまでアップで撮影でき、根尖部や歯髄(歯の内部)まで鮮明に写ります。通常のレントゲンとの違いは一目瞭然です。
撮影方法ですが、このような小さいセンサーを左の写真のように、撮りたい歯の下に当てがいます。(実際の治療では麻酔をかけた状態で行います)。
この状態で上からX線照射器でパシャっと撮影します。
一見問題なさそうに見えている歯も、レントゲンを撮って見ると、実は根尖部に病気が隠れていて抜かなければならないかもしれません。抜くべき歯を放っておくと、病巣が顎の骨まで広がって穴が空いてしまうこともあります。
こんなワンちゃん猫ちゃんは、歯周病になっている可能性があります。
- 歯が汚れている
- 歯肉が赤い
- 口が臭い
麻酔下の歯石除去と合わせて、歯科用レントゲンを撮って見ませんか?
歯科用レントゲンで診断可能である代表的な歯科疾患
- 根尖膿瘍
- 歯根嚢胞
- 乳歯遺残
- 歯芽腫瘍
歯周病の治療
その場しのぎの中途半端な歯周病治療は、将来に禍根を残す可能性があります。歯石の取り残しによる歯周病のさらなる進行、おおざっぱな処置でついてしまった歯の傷による、歯石が付着しやすい口腔環境への悪化などです。
すこしでも長い健康寿命を願う当院では、全身麻酔下での慎重かつ丁寧な歯石除去を行なっています。
麻酔をかけて行なう歯石除去は、無麻酔と比較して下記のようなメリットがあります。
麻酔下での歯石除去のメリット
- 寝ている間に終わるためストレスが少ない(動物を押さえつけなくて済む)
- 歯の裏側の歯石まで取りきれる
- 歯周病菌の隠れ家である「歯周ポケット」を洗浄できる
- 歯石を取った後に丁寧な研磨ができるので、歯がツルツルになり、新しい歯石が付きにくくなる
2段階のステップで行う徹底的な歯石除去と歯周病治療
ステップ1 超音波スケーラー
まずは超音波スケーラーと呼ばれる歯科用器具を使って、歯垢や歯石を取り除きます。
同時に歯と歯肉の間の「歯周ポケット」の中を洗浄して綺麗にします。
無麻酔だと、歯周ポケット洗浄まではほとんどできません。
ステップ2 歯科専用ブラシやゴムによる研磨
歯石を取り除いただけの歯の表面はデコボコしていて、再び新しい歯石が付きやすい状態になっています。これでは、近いうちにまたストレスを掛けて歯科治療を行わなければならなくなってしまいます。
そのため、次に行うブラシやゴムのついた器具と研磨剤を使った歯の研磨は、とても重要な治療ステップとなります。
歯の表面を磨き、ツルツルに仕上げて歯石が付きにくい健康的な歯に蘇らせます。
歯石除去治療の事例紹介
歯石除去動画1(軽度歯周病)
歯石除去動画2(中等度歯周病)
歯石除去動画3(重度歯周病)
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〈犬:歯石除去前〉
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〈犬:歯石除去後〉
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〈猫:歯石除去前〉
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〈猫:歯石除去後〉
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〈ブルーライトで比較:歯石除去前〉
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〈ブルーライトで比較:歯石除去後〉
歯石を除去後綺麗になった歯を見て安心してはいけません。
この状態を維持し歯周病を抑えるためには、適切な日常ケアが欠かせません!
今日から始められる歯の日常ケア
歯磨き
STEP1 口を触られることに慣れさせる
おやつを用意し、まずは口の周りをなんとなく撫でてみましょう。おとなしく触らせてくれたら褒めてご褒美を与えます。慣れてきたら唇をめくる練習をしましょう。
STEP2 指で歯や歯肉に触られることに慣れさせる
歯ブラシを使う前に、指で歯や歯肉に触れるようにします。
好みの味の動物用歯磨きペーストを指につけておくと嫌がりにくくなります。
STEP3 デンタルブラシを使って歯を磨く
デンタルブラシに対する恐怖心を除くため、ブラシを歯に一瞬あて、ご褒美をあげましょう。抵抗がなくなったら徐々にブラシを動かし歯磨きをします。
磨きやすい切歯(前歯)や犬歯からスタートし、徐々に奥の歯まで磨きましょう。
<ポイント>
各ステップでは、できたらその都度おやつを与え、よく褒めてあげましょう。
嫌がる時は無理やり続けず、歯磨きは「おやつをもらえる楽しいこと」と覚えさせることが大切です。
デンタルグッズ
デンタルブラシには様々な大きさや形のものがあります。好みのブラシを見つけましょう。
デンタルブラシが難しければ、歯磨き手袋や歯磨きシートを使ってみましょう。
歯磨きができない子、ちょっとサボりたい日には…
噛む歯磨き
おやつ感覚で噛むことにより、歯垢や歯石がつくのを防ぎます。
- ブログでグッズ紹介をしています。
あわせてご覧ください! - 2017年1月16日 愛用者の声
飲む歯磨き
飲み水に数滴混ぜておくことで、歯周病菌の増殖を防ぎます。
塗る歯磨き
口の中の粘膜に塗るいちご味の粉薬です。歯周病菌の増殖を防ぎ、炎症を抑えます。
- ブログでグッズ紹介をしています。
あわせてご覧ください! - 2017年7月15日 いちごで歯周病予防!?
食べる歯磨き
粒を噛むたびに歯垢や歯石が拭き取られ、蓄積を防ぐフードがあります。