皮膚科専門外来

専門スタッフによる先進の皮膚科治療

当院では、正確な診断による適切な治療、動物にできるだけ負担がかからない治療、飼い主様の生活スタイルに合った治療を心がけております。
治療の目的は痒み、脱毛、皮疹などを改善することによる、動物のQOL(生活の質)の改善と飼い主様のストレスを減らすことです。
具体的な治療としては、最新の知見を基に、抗菌薬、ステロイド薬、免疫抑制薬、イヌインターフェロン-γ、減感作療法薬、様々な外用薬、サプリメントなどを動物、飼い主様に合わせて使います。

獣医皮膚科・耳科に特化した獣医師チーム「VDT」との提携(京都で初めて)

当院は、獣医皮膚科・耳科を専門としプロフェッショナルな皮膚科・耳科診察技術を提供する獣医師チーム「VDT」と、京都で唯一提携をしている動物病院です。
皮膚病に関する各種相談も受け付けていますので、お困りの方はご相談ください。

Vet Derm Tokyo「獣医皮膚科・耳科専門 獣医師チーム」

ホームページ:https://www.vdt.co.jp/

痒がりサインを見逃さないでください

お家で飼っているワンちゃん、ネコちゃんが異常に体を掻いている、夜中にポリポリ聞こえてくる、皮膚にプツプツと湿疹ができる…  そのような場合は皮膚病にかかっているかもしれません。
痒みを引き起こす原因には感染性、寄生虫性、精神的要因、食事アレルギー、アトピー、 ある種の腫瘍などがあります。
原因によって治療が異なるため、正確で慎重な検査が必要不可欠となります。

代表的な皮膚疾患検査

問診

問診は診断していく上でとても重要です。
特に難治性、再発性の動物では、聞かなければならない事が多いです。
具体的には、いつからの症状か、初発の時期、季節性があるか、食事内容、シャンプー、ノミ・マダニの予防、過去の治療などを詳しく聞く事になります。

視診、触診

問診の次にすることは、目で視て、手で触ることです。
皮疹の種類、部位、重症度などを確認していきます。
病気によって、出てくる皮疹や部位に特徴があります。

スタンプ検査

皮疹にスライドガラスを押し当て染色します。
細菌、マラセチア、細胞などを評価出来ます

皮膚掻爬検査

鋭匙(えいひ)という器具を使って皮膚を削ることで、皮膚のより深い場所を検査できます。
疥癬、毛包虫(アカラス、ニキビダニ)などの寄生虫を探すのに有効です。

抜毛検査

毛を抜いて顕微鏡で見ることで、皮膚糸状菌、毛包虫、毛の異常などを確認します。

(簡易)細菌培養検査
  • 培養検査は、細菌が培地で繁殖するかどうかを確認する検査です。
  • 感受性検査は、培地に細菌を繁殖させるのと同時に、抗菌薬が染み込んだディスクを置くことで、その細菌にどの抗菌薬が効果的かを調べます。
皮膚科医による細菌培養検査

提携しているVDTに検体を送ることで、細菌の同定や、より皮膚病に適した抗生剤の種類を調べられます。

除去食試験

除去食とは、食物アレルギーが出にくいように作られた特別な療法食です。
除去食には今までに食べた事が無いであろう新奇タンパク質を主成分にしたもの、タンパク質をアミノ酸レベルにまで細かくしたもの、単一のタンパク質のみを使うことで食物アレルギーを起こしにくくしたもの、などがあります。
この除去食のみを与えてもらうことで、症状が改善するかを確認するのが除去食試験です。
この検査で症状が消えたら、食物アレルギーの可能性が考えられます。

アレルギー検査

血液から、アレルゲンとなりうるもの、アレルギー反応の強度を確認する事ができます。
アレルゲンには食物(牛肉、小麦、卵など)と環境中に存在するもの(ハウスダスト、花粉、カビなど)があります。
この検査は食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を診断していく上で、参考になります。

※一度に上記の全ての検査を実施する事は少なく、基本的にはスタンプ検査から始め、必要そうであれば他の検査も同時に行う、もしくは治療の経過を見て追加していくという流れになります。
検査で病原体がいた場合は、適切な治療(ノミ・マダニ予防、抗生剤、抗真菌薬、抗菌シャンプーなど)をしていく事になります。

もし病原体がいない場合、もしくは適切な治療をしたにも関わらず痒みが残る場合は、アレルギーを考えてアレルゲンを除去するために除去食試験を行います。

除去食試験は、新奇タンパク(これまでに与えたことのない食物)を主成分としたフードや、タンパク質をアミノ酸レベルにまで細かくしてアレルギーを起こさないようにしたフードなどを1〜2ヶ月続けて、痒みが無くなるかをチェックする試験です。
これでもまだ痒みが続く、もしくは残るという場合はアトピーやその他の稀な病気を疑っていきます。

皮膚病は直接命に関わるようなことは少ないですが、QOL(生活の質)に大きく関わってきます。
放っておくと経過が長くなってしまうこともよくあるので、少しでも異常を感じた方は病院に連れて来てください。

代表的な皮膚病

膿皮症

膿皮症は皮膚において、細菌が増殖することによって起こる疾患であり、そのほとんどはアトピー性皮膚炎、甲状腺機能低下症、脂漏症などの様々な疾患に続いて起こります。
膿皮症は通常痒みを伴い、赤い発疹や、膿を持ったようなつぶつぶ、小さな円のような皮疹が出ます。

画像のような皮膚所見があれば膿皮症の可能性があるので、気付かれた時に連れてきてください。

治療には抗生剤を3週間ほど使います。薬用シャンプーや、抗生剤入りの軟膏も有効です。
近年、メチシリン耐性ブドウ球菌が問題となっており、様々な抗生剤に耐性を持っています。このような耐性菌の場合、細菌培養検査及び薬剤感受性試験に基づいた抗生剤を投与します。

マラセチア性皮膚炎

マラセチアは動物の皮膚、口、肛門周囲の粘膜、外耳道の表面に常在する酵母で、何らかの原因で皮脂の分泌が過剰になると、それを栄養源として、過剰に増殖します。その結果、皮膚や耳で炎症が起きると考えられています。
皮膚炎が起こりやすい場所としては、外耳、口唇、鼻、肢、指間、首の腹側、腋窩、内股、会陰部などです。
症状としては紅斑、痒み、色素沈着、脱毛、脂漏、落屑、苔癬化(肥厚)、臭気があります。

治療は抗菌薬添加シャンプーで、週に2、3回洗浄し、皮膚の状態をみて徐々に減らしていきます。
皮膚の過度の乾燥や、薬剤刺激などが出る場合は刺激の弱いシャンプーに変えるか、保湿剤を洗浄後に塗布します。
皮膚症状が重度または広範囲の場合には抗真菌薬を2〜3週間程投薬します。
再発予防としては、抗真菌薬添加シャンプーで、週に1、2回洗浄してあげると効果的です。

ノミアレルギー性皮膚炎

ノミアレルギー性皮膚炎は、3大搔痒疾患の一つで、罹患すると激しい痒みを呈します。
犬と猫で原因となるノミは通常ネコノミで、それらがⅠ型もしくはⅣ型アレルギー、好塩基球性過敏症を引き起こすと考えられています。
ノミはライフサイクルの中で、成虫だけが吸血可能ですが、その成虫のノミは約5%に過ぎません。残りは卵、幼虫、蛹として、生活環境中に存在します。掃除、洗濯や殺虫を行い、 ノミ予防を定期的に続ける必要があります。

多くの場合、病変部は下半身で、腰背部、尾根背部、後肢、会陰部、臍部に、脱毛やフケ、かさぶたなどがみられます。
治療にはノミの駆虫薬を用います。
また痒みをコントロールするためにステロイド薬を使い、二次感染があれば抗菌薬を使うこともあります。

食物アレルギー

食物アレルギーとは、食物抗原に対する免疫学的反応として、皮膚症状や消化器症状が起きる病気です。
症状としては痒みによる掻爬痕、紅斑、脱毛、色素沈着、皮膚の肥厚などです。
皮膚炎が起こる場所として注意すべき場所は、口の周囲、眼の周囲、背中、肛門や会陰部の周囲です。
またアトピー性皮膚炎にも共通するのですが、外耳道、四肢端、指間、腋窩、肘の内側、大腿部内側などにも皮膚炎が起きやすいです。
診断にはアレルギー以外で痒みを引き起こす疾患を除外する必要があります。
治療は除去食を用います。食物アレルギーのみを発症している場合、その子に合った食事に変えることで完全に治ります。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは「遺伝的素因による炎症性及び掻痒性のアレルギー性皮膚炎であり、多くは環境抗原に対するIgEに関連した特徴的な臨床症状を示すもの」と定義されています。
ただし最近ではアトピー性皮膚炎の症状が認められるものの、IgEの関与が認められない場合もあり、この疾患をアトピー様皮膚炎と呼ぶようにしています。
アトピー性皮膚炎を診断するには、他の痒みの原因を除外して、かつ病歴と臨床症状を基に診断します。
治療は免疫抑制剤、オクラシチニブ、インターフェロン注射、減感作療法、外用薬、シャンプー、食事、サプリメントなどを使用します。
これらの治療を生涯続ける可能性が高いので、慎重に診断、治療、経過の観察をしていかなければいけません。

最新の治療法

減感作療法

減感作療法では、アトピー性皮膚炎の原因となっているアレルゲンを、逆に体に取り込むことで、アレルゲンに徐々に慣れさせていきます。
開始前には原因アレルゲンを特定するための検査が必要です。

アトピー性皮膚炎の治療の中で唯一の根本治療ですが、効果が無い場合や治療を中止すると再発する可能性があります。
奏功すれば、薬などを完全に休薬できるか、減らすことが可能です。

新薬「オクラシチニブ(アポキル®錠)」 

2016年に発売されたオクラシチニブ(アポキル®錠)は、IL-31(痒みを引き起こす)のシグナル伝達に関わるJAK1という物質を阻害することで、痒みを抑えます。
また痒みを抑えることで掻爬行動を減少させ、炎症を抑えます。

この薬はステロイド薬と同等の速さで効果があり、長期投与でも副作用が少ないことが最大の特徴です。
よってオクラシチニブ(アポキル®錠)は長期治療が必要なアトピー性皮膚炎の救世主になりえます。