縫合糸反応性肉芽腫

病態
手術の際に使用した縫合糸の周りの皮下組織に炎症が起こり肉芽腫(しこり)が形成されたものを縫合糸反応性肉芽腫といいます。
どのような犬種にも起こり得ますが、特にミニチュアダックスフンドが好発犬種です。
避妊手術や去勢手術における血管結紮に使用された縫合糸に対して発生することもあります。
発生率は使用する糸の種類により異なり、高い順に絹糸、次いでマルチフィラメント吸収糸、次いでモノフィラメント吸収糸となります。
発生は術後数ヶ月〜数年後と様々です。
近年は超音波メスを使用した手術が普及し、絹糸の使用が減ったためか、縫合糸反応性肉芽腫に遭遇する機会は減少傾向にあります。
症状
縫合糸が存在した場所が皮下であれば、皮下結節の触知が可能です。
結節を放置すると、拡大して自潰することがあります。
また発熱や食欲減退、活動性の低下などの症状が見られる例もあります。
診断
基本は外科的切除し病理検査で確定診断することが望ましいです。
その他の診断方法として、結節の細胞診で好中球やマクロファージを検出したり、無菌であることを確認するために針吸引で採取したサンプルを培養したりして診断します。
腹腔内に発生した場合は写真のようにエコーまたはCTで確認し、エコー下細胞診にて同様に診断します。
治療
外科的切除が第一選択となります。
切除後も排膿や自潰が継続することもあり、その場合は免疫抑制剤による内科療法が必要となります。
当院では避妊・去勢手術で腹腔内に縫合糸反応性肉芽腫が発生するリスクを考慮し、超音波メスを使用した術式をおこなっています。
超音波メスは血管をシーリングしながら焼き切ることができ、結紮に縫合糸を使用する頻度を減らすことができます。
興味のある方はお気軽にご相談ください。