変性性脊髄症

病態
変性性脊髄症(DM)とはゆっくりと体の麻痺が進行する脊髄の変性疾患であり、詳細な病態は解明されておらず原因は不明です。
ある報告では特定の遺伝子変異が原因である可能性が示唆されたことから、人間の筋委縮性側索硬化症(ALS)と類似している可能性があるようです。
ウェルシュ・コーギーにおける発症が最も多く、ジャーマン・シェパードやボクサー、シベリアンハスキーなど特定の大型犬種の他、トイプードルなどの小型犬種での報告もあります。
9~11歳のシニア期から発症することが多いです。
症状
症状から4つのステージに分類されます。
症状は後肢の麻痺から始まり、導火線のように徐々に頭側に進行していきます。
他の神経疾患は神経性の痛みを伴うことも多いですが、DMは痛みを伴いません。
ステージ①:
後肢の不全麻痺(ふらつき)はあるものの自力歩行が可能
ステージ②:
後肢が完全に麻痺し四肢を使った自力歩行が困難
ステージ③:
前肢の不全麻痺により歩行に補助が必要となる
自力排泄が難しくなることが多い
ステージ④:
四肢が完全に麻痺し、歩行が困難
呼吸困難や嚥下障害を併発
診断
確定診断は脊髄の病理検査が必要になるため生前検査はできません。
犬種や年齢などのシグナルメント、遺伝子検査、椎間板ヘルニアなど麻痺を引き起こす鑑別疾患の除外から総合的に診断します。
治療
残念ながら有効な治療法や予防法は存在せず、基本的には症状に応じて介護や補助を加えてQOLを維持できるようにします。
ステージ①では大きく生活に支障が出ないことが多いですが、フローリングにマットを敷いたり、段差をなくしたりなど自宅での環境整備が有効です。
また後肢を地面に引きずって歩くようであれば靴を履かせることで外傷の予防になります。
ステージ②~③に対しては介護用ハーネスやバスタオルでの歩行補助や車いすの使用が効果的です。
麻痺が進むと自力で歩く頻度が減って筋肉の萎縮がさらに進むため、適度な補助歩行やマッサージなどのリハビリテーションも良いでしょう。
ステージ③以降は自力排泄が困難になることが多いです。
失禁も起こるため、圧尿処置や肛門刺激、オムツなどを駆使して排泄をコントロールする必要があります。
ステージ④になると嚥下障害による窒息や誤嚥のリスクに注意する必要があります。
食事の際は頭を高い位置にする、ウェットフードやリキッドフードを少しずつ与えるなど工夫して予防します。
呼吸困難を伴う場合は酸素吸入が必要になる場合もあります。
DMは治療できませんが、適切に管理できれば付き合っていける病気です。
愛犬のことでお悩みの方はぜひ当院にご相談ください。

