気管虚脱
病態
気管虚脱とは、気管の扁平化により咳や呼吸困難といった呼吸症状を伴うようになる疾患です。
気管は喉から肺まで空気を通すホースのようなもので、C字型の軟骨とその間を結ぶ筋肉(膜性壁)からなるリングでできており、このリングが35〜45個連なってできている蛇腹ホースのような形状をしています。
気管虚脱はこのリングの強度が弱くなることで気管が潰れ、かつ膜性壁が伸びて気管の内側に入り込み、空気の通りを邪魔します。
気管虚脱は、扁平化する部位により頸部気管虚脱と胸部気管虚脱に分けられます。
頸部は吸気時に、胸部は呼気時に気管の扁平化が悪化します。
症状は扁平化の度合いによりますが、よく見られる症状として次のようなものが挙げられます。
・ガチョウの鳴き声のようなガーガーという咳をする
・首輪を引っ張った時や、興奮時に咳をする
・運動をしたがらない
好発犬種はトイ種などの小型犬であり、肥満傾向の犬で多いとされています。
診断
レントゲンで吸気時と呼気時の気管径の変化を評価します。
レントゲンで判断がつかない場合は呼吸器内視鏡検査を実施します。
治療
無症状あるいは一過性の症状を呈する症例には、内科的に治療を行うか、無治療で経過観察する場合があります。
内科的治療には鎮咳薬や気管支拡張剤のほか、軟骨保護効果のあるサプリメントを用いますが、扁平化した気管を元に戻す効果はなく根治はできません。
肥満傾向の犬の場合はダイエットにより呼吸状態の改善が期待されます。また首輪から胴輪に変更し気管への圧迫刺激を緩和する、冷所で安静にするなど、生活環境の改善も重要となります。
激しい咳や呼吸困難など症状が著しい場合は、気管内プロテーゼや気管内ステントを用いて虚脱部を矯正する外科的治療を行います。
当院ではその他、ネブライザー療法や酸素療法をおこなっていますので、気軽にご相談ください。