犬の心基底部腫瘍

病態
心基底部腫瘍は、心臓の基底部(大動脈や肺動脈、心房周辺など)に発生する腫瘍を指します。
犬の心基底部腫瘍の中で最も一般的であるものは大動脈体部から発生する大動脈小体腫瘍ですが、その他にも異所性甲状腺腫瘍や上皮小体腫瘍、リンパ腫や血管肉腫と呼ばれる腫瘍などが発生することが知られています。
また、大動脈小体は血液中の低酸素を感知する化学受容体であることから大動脈小体腫瘍は化学受容体腫瘍(ケモデクトーマ)と呼ばれることもあります。
腫瘍の発生メカニズムには、遺伝的要因や環境要因が関与しているとされていますが、詳細はまだ完全には解明されていません。
好発犬種が、ボストン・テリアやボクサー、イングリッシュ・ブルドッグやフレンチ・ブルドッグなどの短頭種に多いことから、短頭種気道症候群に起因する慢性的な低酸素症が腫瘍の発生に関係している可能性が指摘されています。
症状
心基底部腫瘍の症状は腫瘍の種類や進行度により異なりますが、以下がよく見られる症状です。
•元気や食欲の低下
•咳や呼吸困難:心膜内に液体がたまる(心嚢水貯留)ことで起こることがあります。
•運動不耐性:軽い運動でも疲れる様子が見られる場合があります。
•胸水や腹水、むくみ:心臓の働きが低下することで、体に水がたまることがあります。
•虚脱、失神:血圧低下や心拍異常による一時的な意識消失が見られることもあります。
診断
聴診によって心音の異常を確認したり、レントゲン検査で肺や心臓の状態を評価します。
また、心臓の超音波検査によって直接腫瘍を評価します。腫瘍の詳細な位置や大きさを把握するためにCT検査が用いられることもあります。
最終的に、心臓の腫瘤が何なのかを診断するためには腫瘤の切除生検や細胞診検査がゴールドスタンダードですが、検査の際の合併症や解剖学的な理由から実施することが難しいことが多いので、画像所見などから暫定的に診断されることが多いです。
治療
心基底部腫瘍に対する治療は、腫瘍の種類や進行度合いにもよりますが大きく分けて
①外科切除、②化学療法、③放射線療法の単独もしくは併用の3つに分けられます。
①外科切除
解剖学的な位置関係から、腫瘍を完全に切除することは難しいので、外科切除は確定診断を得るための生検と心嚢水貯留の改善と再貯留を防ぐことが主な目的となります。適応には、慎重な判断が必要となります。
②化学療法
心基底部腫瘍に対する化学療法には、リン酸トセラニブ(パラディア)とういう分子標的薬が用いられます。消化器症状や食欲低下などの副作用が認められることがありますが、比較的軽度であることが多く、休薬や減薬する事で改善することが多いです。
③放射線療法
放射線療法単独で行われることもありますが、①外科切除や②化学療法と組み合わせて実施されることも多いです。放射線療法を実施できる施設が限られるため、注意が必要です。
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