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ノミ・マダニ予防はいらない?【後編】
こんにちは!看護師の和泉です。
少しずつ虫を見る機会が増え、春が近づいているのを感じます。
ただ、私は虫やクモなどが大の苦手なので、春と夏が来るのが怖いです!(苦笑)
まだ少しだけ、暖房などが手離せない気温で寒い時もありますが、冬の寒い間もノミ・マダニの予防が必要であることを、皆さん知っていますか?
以前、前編としてノミ予防についてお話しましたが、今回はマダニの予防についてお話します!
※マダニの実物の写真が出てきますので、ご注意くださいね!私も見るのが怖いです…(笑)
《マダニって何?》
マダニとは8本足からなる節足動物で、実は昆虫ではなくクモやサソリに近い動物です。
家に棲むダニとは違い、固い外皮に覆われていて、体長は吸血前で約3〜4mmです。
マダニの唯一の栄養源は動物の血液で、幼ダニ・若ダニは脱皮のため、成ダニは産卵のために吸血を行います。
わんちゃんやねこちゃんだけではなく、人間にも寄生し、吸血を行います。
マダニの吸血方法は、他の吸血昆虫とは異なります。
吸血昆虫は動物の血管内に「刺す」ことで吸血をしますが、マダニは口が鋏のような構造になっていて、「噛む」ことで皮膚を切り裂いて、口下片と呼ばれるギザギザの歯を刺し入れて、宿主と連結して吸血します。
この際、唾液に含まれるセメント様の物質を分泌して、口下片と動物とをガッチリと離れないようにします。
このような吸血方法のため、マダニの吸血時間はとても長く、1〜2週間もの間寄生し吸血すると言われています。
《マダニがつくとどうなるの?》
マダニが体表に寄生、吸血することで様々な症状を引き起こしてしまいます。
『直接的な病気』
1.貧血
マダニが大量に寄生、吸血することで貧血を引き起こします。
マダニ1匹だけで、なんと1mlもの血を吸血することができます。
(こんなに小さなチワワさんに沢山ついてしまっては、重大な貧血を引き起こしてしまいますね…)
2.アレルギー性皮膚炎
マダニの唾液がアレルゲンとなり、強い痒みを引き起こします。
3.ダニ麻痺症
マダニの種類によっては、毒性の物質を唾液中に産生できるものもいます。
そのマダニに吸血され、毒性物質が注入されると、神経障害を引き起こしてしまいます。
『マダニが媒介する病気』
1.バベシア症
バベシア原虫と呼ばれる病原体が、赤血球を破壊し、貧血、発熱、黄疸、元気消失を起こし、重症の場合は急死することもある、とても怖い病気です。
人間にも感染する病気で、発熱や貧血を起こします。
2.日本紅斑熱
人間にも感染する病気で、高熱、頭痛、悪寒、倦怠感、発疹、刺し口の腫れを起こします。
治療が遅れると重症化してしまうこともあります。
3.ライム病
発熱、食欲不振、全身性痙攣、関節炎などを起こします。
人間にも感染する病気で、赤い丘疹、発熱、関節痛、放置すると心膜炎や顔面神経麻痺を起こします。
4.Q熱
軽い発熱を起こします。
人間にも感染する病気で、インフルエンザに似た高熱や呼吸症状、肺炎を起こし、慢性の場合は疲労感、慢性肝炎、心筋炎を起こします。
5.エールリヒア症
急性の場合は発熱、鼻汁、流涙、食欲不振、元気消失、貧血などを起こします。
人間にも感染する病気で、発熱、頭痛、関節痛、倦怠感、呼吸困難などを起こし、放置すると命に関わることもあります。
これらの他に、近年ニュースでも取り上げられている【SFTS(重症熱性血小板減少症候群)】があります。
人間が感染する病気で、感染すると潜伏期間を経て、発熱、消化器症状、神経症状、出血症状が起き、致死率は最大で30%と言われていて、亡くなられた方も多くいます。
有効な薬剤やワクチンはなく、対処療法のみの治療となってしまう、とても怖い病気です。
京都府でも感染者が出ており、人から人へ血液などの体液を経て、感染することも報告されています。
マダニは春から夏にかけてピークを迎えますが、秋から冬の間も生息しており、動物の体温や二酸化炭素などに反応して、寄生することがあります。
人間が気づかない間に、服にくっつけて家に持ち帰ってしまうことも…
マダニがもし、わんちゃんやねこちゃんについてしまった場合は、必ず自分では取らないようにしてください。
マダニの口が皮膚に刺さったまま無理に取ろうとすると、皮膚炎を起こしてしまったり、マダニからわんちゃんやねこちゃんへ感染症を移してしまう原因となることがあります。
マダニを見つけたらすぐに、ご来院下さい!
マダニは、皮膚の薄い部分や高いところへ集まりやすいです。
お散歩から帰ったら、耳や顔周り、お腹や足先などチェックしてあげて下さいね!
わんちゃんやねこちゃんだけでなく、私達人間にも移る感染症を持つマダニ。
毎月きちんと予防をしてあげて、病気を防いであげましょうね!
当院では今年から、フィラリア症とノミ・マダニの予防が1つで出来るお肉タイプの予防薬をご用意していますので、是非ご相談くださいね!
看護師 和泉