本日の一症例

乳腺のできもの

腫瘍科(ガン)/外科

犬の乳腺腫瘍(乳腺癌)

動物
種類 トイプードル
性別 避妊雌
年齢 14歳
地域 京都市上京区
症状/病態 乳腺のできもの
考えられる病気 乳腺癌、良性の乳腺腫瘍、乳腺過形成、その他の腫瘍など

他の病院で乳腺にできものがあるとのことで当院に紹介来院しました。
このわんちゃんは以前にも乳腺にいくつかできものができており、その際に避妊手術と乳腺腫瘍の切除を実施していました(すべて良性の乳腺腫瘍)。
今回も5個できものができていました。


写真に示すとおり、一番大きいもので2cmとそこまで大きくありませんが、特に避妊しているわんちゃんではできものが小さくても悪性の可能性が十分に考えられます。

このわんちゃんも以前に避妊していたので、手術の日にCTを撮影したところ、右の脇のリンパ節(右腋窩リンパ節)(赤矢印)が左(青矢印)よりもかなり腫れており、転移が疑われました。

当初はできもののみを切除をする予定でしたが、ご家族と相談し、リンパ節も同時に切除することにしました。

以下、手術の写真となります。苦手な方はご注意ください。
写真の左側が動物の頭側になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皮膚切開の位置を決めるため、あらかじめマーキングしておきます。
今回は最初の写真の黒丸で囲んだ全てのできものを切除することとなったため、かなり広範囲の手術となっています(赤丸で囲んだ部位が2cmのできものがある部位です)。

皮膚を切開後、乳腺を切除していき、予定のリンパ節(青矢印)を確認し、乳腺と同時に切除しました。

切除後は縫合して終了です。

切除した乳腺腫瘍とリンパ節(赤矢印)です。

手術は無事終了し、次の日退院しました。
病理検査は2cmのできものと1.5cmのできものは乳腺癌であり、残りの小さい三つは良性の乳腺腫瘍でした。
また、2cmのできものは予想通りリンパ節に転移しており、乳腺癌の中でもより悪いタイプでした。
1.5cmのできものも乳腺癌でしたが、こちらに関しては病理上そこまで悪くありませんでした。

現在、状態は良好ですが、今後他のリンパ節や肺へ転移する可能性があるため、分子標的薬による治療を行っています。

このわんちゃんのように、特に避妊手術をしているわんちゃんに乳腺腫瘍ができた場合、たとえそこまで大きくなくても悪性の可能性が十分にあります。できものが小さいからといって様子をみないよう病院を受診するようにしましょう。

 

当院では、獣医腫瘍科認定医による腫瘍科専門外来を行なっております。

詳細は下記のリンクをご参照ください。

https://www.kamogawa-ac.jp/cancer-treatment-specialty/

診断名

乳腺腫瘍(犬)