犬
元気がない、ぐったり
腫瘍科(ガン)/外科
犬の脾臓の血管肉腫(脾臓摘出およびサリドマイドによる治療)
動物 | 犬 |
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種類 | MIX |
性別 | 去勢雄 |
年齢 | 13歳 |
地域 | 京都市左京区 |
症状/病態 | 立てない、ぐったり |
考えられる病気 | 様々な病気 |
急に立てなくなり、ぐったりしているとのことで来院されました。
検査の結果、お腹の中に出血があり、CT検査では脾臓に約2cm大のしこりがみられ、明らかな転移はありませんでしたが、脳梗塞がみられました。そのため、緊急手術を行い、脾臓を摘出しました。
手術後は徐々に状態もよくなり、歩くことができるようになりましたが、病理診断は血管肉腫でした。2cmという比較的小さい大きさでも破裂して出血を起こすのが血管肉腫の怖いところです。また、血管肉腫は非常に転移率が高いため、脾臓を摘出しただけでは、多くが数ヶ月程度で亡くなってしまいます。そのため、術後に抗がん剤治療を行う場合があります。
このわんちゃんのご家族にも抗がん剤を提案しましたが、希望されませんでした。そのため、サリドマイドというお薬で治療を行うこととなりました。
サリドマイドは抗がん剤ではありませんが、血管新生阻害作用(がんが成長するために必要な血管を妨げる)を有する薬で、人ではがんの治療に用いられることがあります。2018年にこのサリドマイドを犬の脾臓の血管肉腫に対して使用した報告がなされ、ステージ2の血管肉腫では平均約1年と比較的長期的な生存が認められています。また、2023年にサリドマイドは犬でも比較的安全に使用可能なことが報告されました。一方、サリドマイドは催奇形性の薬ですので、その取り扱いには十分注意が必要です。
以上の点をご家族に説明し、サリドマイドを開始したところ、現在、手術から1年半経過していますが、転移は認められず、元気に過ごしています。
犬の脾臓の血管肉腫におけるサリドマイドの報告は少なく、抗がん剤に匹敵する治療効果があるかどうかはまだ不明ですが、一つの治療選択肢になると思われます。
当院では、獣医腫瘍科認定医による腫瘍科専門外来を行なっております。
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