本日の一症例

食欲がない

泌尿器科/外科

猫の尿管結石(尿管膀胱新吻合)

動物
種類 三毛猫
性別 避妊雌
年齢 9歳5ヶ月
地域 京都市左京区
症状/病態 嘔吐・食欲低下
考えられる病気 さまざまな病気

数日前から嘔吐と食欲低下が認められたため来院されました。
検査を行ったところ、腎臓の血液検査の値が高く、左側の尿管に結石が確認されました。

さらに詳しく調べるためにCT検査を行ったところ、結石が詰まっていて、左側の腎臓から膀胱まで造影剤の排泄が認められていませんでした。
(赤矢印:右尿管で、造影剤が白く膀胱まで排泄されています。青矢印:左尿管で、造影剤の排泄が認められず、結石(黄色矢印)より上部の尿管は拡張しており、下部の尿管は細くなっています)。
※造影剤が排泄されないことは、尿が腎臓から膀胱まで流れていないことを意味します。

この尿管結石が嘔吐や食欲低下、腎臓の値の異常の原因と考えられたため、手術を行うこととしました。

尿管結石の手術方法には、尿管切開、皮下尿管バイパス術(SUB)、尿管膀胱新吻合術などがあり、猫ちゃんの年齢や全身状態などを考慮して最適な方法を選択します。
今回は、その中から「尿管膀胱新吻合術」を実施しました。

この手術は、尿管切開や皮下尿管バイパス術(SUB)と比較してやや複雑ですが、尿管切開と比較すると再閉塞のリスクが少ない点が利点です(尿管切開では約10〜30%程度の再閉塞のリスクがありますが、尿管膀胱新吻合術では数%とされています)。
また、皮下尿管バイパス術(SUB)は人工物を体内に留置するため定期的な洗浄が必要となりますが、尿管膀胱新吻合術ではその必要はなく、通院や処置による猫ちゃんへのストレスを軽減できます。

以下、手術の写真となります。苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お腹を開けて、まずは膀胱を頭側へ移動させたうえで筋肉と縫合し、尾側へ引っ張られないように固定します(矢印:膀胱の固定部位)。

続いて、尿管と膀胱をそれぞれ切開し、両者を縫合して尿管から膀胱へ尿が流れるようにします(矢印:尿管と膀胱の縫合部位)。

さらに腎臓を尾側へ移動させたうえで腹壁と縫合し、頭側へ引っ張られないように固定します(矢印:腎臓の固定部位)。
※膀胱を頭側へ、腎臓を尾側へ移動固定することで、尿管と膀胱の縫合部にかかる張力を軽減し、縫合部離開のリスクを減らすことができます。

最後にお腹の中にドレーンを入れてお腹を閉じて、手術を終了しました。

 

手術後に腎臓の数値は正常まで改善し、7日後には元気に退院しました。

今回の猫ちゃんは9歳であり、今後も長く健康に生活できることを期待して、再閉塞のリスクの低い尿管膀胱新吻合術を選択しました。

猫の尿管閉塞は近年増加傾向にあり、症状は今回のように「吐く」や「食欲がない」などのことが多いです。これらの症状はどの病気でも考えられますが、尿管閉塞は生命に関わる病気ですので、症状がみられる際は様子を見ずに病院を受診するようにしましょう。

動物病院の先生方へ

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診断名

猫の尿管閉塞