本日の一症例

腎臓のできもの

腫瘍科(ガン)/猫科(猫の病気)/外科

猫の腎臓腫瘍(腎腺癌)

動物
種類 日本猫
性別 避妊雌
年齢 12歳
地域 京都市下京区
症状/病態 腎臓のできもの
考えられる病気 腎腺癌、リンパ腫、良性腫瘍、肉芽腫など

他の病院で腎臓にできものがあるとのことで当院に紹介来院しました。

この猫ちゃんは1ヶ月ほど前から元気が落ちており、食欲も50%程度とのことでした。また、血液検査にて赤血球増加症が認められ、腎臓のできものが原因と考えられました。できものは左腎臓に認められ、大きさは約3cm程度であり、周囲の組織への浸潤は認められませんでした。

猫ちゃんの腎臓のできものはまれですが、腎腺癌である可能性が高いこと、腎腺癌であったとしても、明らかな転移が認められず、入院期間を乗り越えれば長期生存ができる可能性があることをご家族にご説明し、手術を行うこととしました。

以下、手術の写真となります。苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お腹を開けて腎臓が見えやすいようにします(赤丸:腎臓)。

腎臓周囲の脂肪を剥がして、腎動脈(赤矢印)と腎静脈(青矢印)を見つけます。

まずは腎動脈から糸で縛り、赤矢印の位置で切断します。

次に腎静脈を糸で縛り、青矢印の位置で切断します。これにより腎臓へ入る血流と腎臓から出る血流が遮断されます。

最後に膀胱近くで尿管(黄色矢印)を切断し、腎臓を摘出します。

摘出後の写真です(赤丸部分:腎臓があった所)。

 

手術は無事終了し、次の日に退院しました。元気・食欲も徐々に改善し、術後8日目にはもとの元気な状態に戻り、赤血球増加症も改善しました。

病理検査は腎腺癌であり、完全に摘出されていました。

現在、状態は良好ですが、今後リンパ節や肺などへ転移する可能性があるため、定期的に経過をみていく予定です。

 

腎腺癌は、症状として元気や食欲の低下、体重減少などが認められますが、これは痛みを伴うからです。手術もかなり痛いというイメージがあるかもしれませんが、手術をしてあげることで逆に痛みがとれて元の元気な状態を取り戻すことができる可能性もあります。

 

当院では、獣医腫瘍科認定医による腫瘍科専門外来を行なっております。

詳細は下記のリンクをご参照ください。

https://www.kamogawa-ac.jp/cancer-treatment-specialty/

 

診断名

猫の腎臓腫瘍(腎腺癌)