ぶどう膜炎

眼球の基本構造は、外層の強膜と角膜、中間層のぶどう膜、内層の網膜と視神経から
構成されています。ぶどう膜は虹彩と毛様体(前部ぶどう膜)、脈絡膜(後部ぶどう膜)に
よって構成されています。
ぶどう膜炎はぶどう膜に炎症が起こる疾患です。角膜や結膜といった眼の表面の疾患についで
発症する可能性が高く、日常の診療でもよく遭遇する病気の一つです。
分類
ぶどう膜炎は、発症する部位によって分類されています。
虹彩と毛様体に生じる炎症を前部ぶどう膜炎、または虹彩毛様体炎と呼び、
脈絡膜の炎症は、後部ぶどう膜炎と呼ばれます。虹彩、毛様体、脈絡膜全てに
炎症が生じたものは汎ぶどう膜炎と呼ばれます。
原因
・感染性:細菌、ウイルス、寄生虫、カビなど
・代謝性:糖尿病、高血圧症、高脂血症、血液凝固不全
・免疫介在性:白内障、血小板減少症、水晶体の外傷、ぶどう膜皮膚症候群
・反射性:潰瘍性角膜炎、壊死性・非壊死性強膜炎
・腫瘍性:転移性腫瘍、眼原発腫瘍、組織球増殖性疾患、肉芽腫性髄膜脳炎、過粘稠度症候群
・特発性
・外傷性
・中毒性
一般的に、犬や猫では原因が特定できない特発性のぶどう膜炎が最も多いとされています。
診断
ぶどう膜炎を呈する動物は、特徴的な症状を示します。
①眼球結膜、強膜の重度充血
白目の部分に、レッドアイ(赤目)と言われる重度な充血が
確認されます。
②縮瞳
虹彩の浮腫や、瞳孔を調節する筋肉のけいれんなどにより
発生します。
③羞明、まぶたのけいれん、流涙、痛み
羞明とは、目をショボショボさせる状態を言います。
④前房フレア
充血が強い場合、眼球の前房と呼ばれる部分の蛋白質が増加することにより、
光の軌道が連続して観察される現象を言います。図のように白く濁って観察されます。
ぶどう膜炎は、以上のような特徴的な所見を示しますが、特にぶどう膜炎と同様な
レッドアイを呈する結膜炎、角膜炎、強膜炎、緑内障などについては鑑別が必要に
なります。
ぶどう膜炎は、全身性の疾患と関与していることもあるため血液検査や画像検査などの
検査と合わせて最終的な診断を下すことが重要となります。
治療
ぶどう膜炎の治療は原因が特定できた場合は、その疾患の原因療法が最も効果的でですが、
多くは特発性であるため、悪化を防ぐため積極的に消炎治療を行うことが重要となります。
治療には、ジクロフェナクやプラノプロフェンなどの抗炎症作用のある点眼薬を用います。
ぶどう膜炎は、放っておけば白内障や緑内障へと悪化することもあるため、ぶどう膜炎が
怪しい場合は早期に治療をスタートする必要があります。