ウサギの毛球症

ウサギにおいて、毛球症と呼ばれる病気は一般的かもしれません。
しかし、毛球症と表現すると、毛を大量に飲み込んで食欲不振を呈しているという
印象が強いですが、その症状は様々です。
病態
ウサギは、繊維質を食餌として摂取しますが、繊維質は栄養源というよりも消化管運動の
原動力としての役割の方が重要であり、繊維質の摂取量が減少すると胃腸の運動は低下
してしまいます。また、ウサギは常に唾液を分泌しているため、食べ物が胃から腸に
流れないと胃の中に唾液や胃液がたまり、胃が膨れます。このようにして、消化管運動
機能はさらに低下します。
ウサギの食欲不振の原因としては、飼育環境の問題や、消化器疾患、不正咬合、尿石症、
骨折、腫瘍、腎臓病などが挙げられます。この中で、毛を過剰に摂取することによって
発生した食欲不振とそれに伴う消化管運動機能低下症を毛球症と言います。
症状
① 便の異常(軟便、下痢、毛の混入、数珠状、大小不同)とそれに伴う肛門周囲の汚れ
② 嗜好性の変化(ペレットだけを食べる、乾草だけを食べるなど)
③ 12時間以上の食欲不振、食欲廃絶
④ 排便量の低下および排便停止
⑤ 腹痛による歯ぎしり、背弯姿勢、弓状姿勢、落ち着かない動作
⑥ 元気消失、ぐったりしている、毛並みが荒くなる(毛づくろいの減少)
⑦ 呼吸促迫
⑧ 血圧低下、ショック
通常、①から⑧の順に悪化していきますが、順番通り症状が現れるとは限らず、元気消失や
呼吸促迫だけ示すウサギも少なくありません。
治療
内科的な治療では、まず点滴を行うことによって脱水の改善を第一に行います。
また、内服薬の治療としては食欲増進剤や消化管運動機能亢進薬、抗菌薬などを処方します。
軽度の消化管運動機能低下にはこれらの基本的な治療で改善することが多いです。