慢性腎臓病

病態
腎臓は血液中から汚れを取り除く重要な臓器です。
腎臓に入った血液は濾過され、不要な汚れは尿へと排泄されます。
慢性腎臓病とは、腎臓のなかで血液を濾過し尿をつくる「ネフロン」と呼ばれる部分が徐々に壊れていく病気です。
正常な腎臓では約20万個のネフロンが働いています。
その一部が壊れてしまうと残されたネフロンに負担がかかり、さらに壊れるネフロンが増え、徐々に腎臓の機能が低下してしまいます。
慢性腎臓病になると血液中の汚れを尿へ出せなくなり、血液中に汚れが溜まることで尿毒症となり、元気食欲の低下や嘔吐、毛並みの悪化など様々な症状が現れます。
尿は濃縮されず、水のように薄い尿が多量に排泄されるようになり、脱水状態となります。
また腎臓は赤血球の形成に関わっているため腎臓病が進行すると貧血が起こることもあります。
慢性腎臓病の原因は主に次のようなことが挙げられます。
・高齢
・脱水
・腎臓の炎症や腫瘍
・細菌やウイルスによる感染症
・尿路結石症
・先天的な腎臓の異常
診断
・尿検査
尿比重と尿蛋白の有無を確認します。
比重1.035以下の薄い尿では慢性腎臓病が疑われます。
尿の採取方法はこちらをご覧ください。
・血液検査
尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cre)、リン(P)の高値を確認します。
またナトリウム、カリウム、クロールなどのミネラルバランスの乱れが見られる場合があります。
ただし血液検査で上記の項目に異常値が見られ始めるのは、腎臓に残された機能が25〜10%ほどになってからです。
最近では血液検査でSDMAという項目を測定することにより、BUNやCreの上昇の前に慢性腎臓病を発見できるようになりました。
・その他
超音波検査やレントゲンにより腎臓の大きさや構造を見たり、血圧を測定したり(慢性腎臓病の猫の約3割に高血圧があると言われています)する場合があります。
これらの検査結果をもとにステージ分類を行います。
治療
上記のステージ分類に応じて下記の治療を組み合わせて行います。
一度壊れてしまったネフロンを再生させることはできないため、残された部分の負担を軽減しネフロンを温存することが治療の目的となります。
・食事療法
低タンパク、低リンの腎臓病用療法食に変更します。
脱水の改善のため飲水量を増やす工夫をします。常に新鮮な水を飲めるようにしましょう。
・輸液療法
脱水改善のために静脈または皮下輸液を行います。
・毒素吸着剤、リン吸着剤
尿毒症物質やリンを腸内で吸着し便中に排泄するお薬です。
・ACE阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬
腎臓の血管を広げて血圧を下げ、蛋白の漏出を防ぎます。
・再生医療
当院では再生医療を実施しています。
まだまだデータは少ないですが、慢性腎臓病においても病態によって再生医療が適応となる場合があります。興味のある方は一度ご相談ください。
慢性腎臓病はなかなか症状が現れず静かに進行することから、「サイレントキラー」とも呼ばれます。
早期発見のためには、日常的な尿量・飲水量の観察や、病院で定期的に尿検査や血液検査などの健診を受けることが重要です。