中毒
飼育環境の変化とともに、誤食の原因も多様化してきており、犬や猫の誤食に遭遇する機会は
稀ではなくなってきています。特に、年齢の若い動物は目を話したすきに中毒性物質を摂取す
る危険性が高いため、注意が必要です。
病態
若い動物あるいは健康な動物が、急に神経症状や臓器不全、あるいは他の全身症状を発し、他
の一般的な病気が除外された場合は、中毒の可能性が考えられます。
診断
問診から、毒物の誤食を診断します。また、血液検査や尿検査を行い、特異的な毒素の血液中
の濃度を検査します。多くの毒物は、他の一般的な疾患によって起こるものとよく似た症状を
示すことがあるので、診断には注意が必要です。
治療
治療の目標は、心肺機能や全身状態の安定化、さらなる毒素吸収の防止、可能であれば解毒剤
の投与などが挙げられます。
・動物から汚染物質を取り除く
皮膚の汚染は、温水で洗ったり、刺激の少ない洗剤で洗浄します。
毒物を摂取している可能性が考えられる場合は、催吐処置(吐かせる処置)を考えます。
ただし、腐食性のある物質(酸、アルカリ、石油留出物)を摂取した恐れがある場合や、
なんらかの疾患で気道を防御できない動物に対しては適応禁忌です。この場合、胃洗浄を
行う場合があります(全身麻酔による導入と気管チューブの挿管が必要)。
その他にも、活性炭を用いて腸からの毒素の吸収を妨げたり、下剤を用いて便からの
毒素の排出を促進する方法、強制的に利尿を行い中毒を引き起こしている物質の排泄を
促進する方法などもあります。
ここで、代表的な中毒物質をいくつかあげます。
・チョコレート、カカオ、ココア、コーヒー、茶葉、ガラナ、コーラ、栄養ドリンク剤など
→ 原因物質:メチルキサンチン酸
症状:嘔吐、下痢、動悸、興奮、失禁、頻脈、心毒性、痙攣など
・ネギ類(タマネギ、長ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウなど)
→ 原因物質:有機チオ硫酸化合物
症状:溶血性貧血、血色素尿症
・キシリトールを含むお菓子やフルーツ
→ 原因物質:キシリトール
症状:嘔吐、下痢、沈うつ、衰弱、痙攣、低血糖
・ブドウ、レーズン
→ 原因物質:不明
症状:嘔吐、高窒素血症、高カルシウム血症、高リン血症、急性腎不全、
尿細管変性、尿細管壊死
・生の魚介類、甲殻類
→ 原因物質:チアミナーゼ
症状:嘔吐、下痢、消化不良、ビタミンB1欠乏症
上記の他にも中毒性の物質は、まだまだ存在します。
犬や猫に与えてはいけない食べ物があることは、少しずつ認知はされてきていますが、
まだ知らない方がたくさんいらっしゃるのも事実です。誤食を防ぐためにも、家庭の
環境を整えて動物が容易に毒物を口にすることができないように徹底することが重要です。