猫の肛門嚢腺癌

病態
肛門嚢(肛門の右下と左下にひとつずつある)の中にあるアポクリン腺が腫瘍化した悪性腫瘍(がん)で、猫では、極めてまれな腫瘍です。
発生年齢の平均は12歳~13歳であり、主に6〜7歳以上で発生します。
転移率は16%とそこまで高くはなく、お腹の中あるいは骨盤の中のリンパ節や肺、肝臓などに転移します。
症状
肛門周りの腫れや潰瘍、排便困難、食欲低下などが認められます。
診断
肛門嚢腺癌はできものの針生検(細い針をさして細胞を採取する検査)で診断可能な場合がほとんどです。

針生検で採取された肛門嚢腺癌
ステージングおよび併発疾患の評価
肛門嚢腺癌と診断した場合、がんの大きさや広がり、リンパ節転移、遠隔転移(肺や肝臓などへの転移)の評価を行います。これをステージングといいます。
同時に併発疾患がないかどうかも評価します。
これらの評価には以下の検査を組み合わせて行い、評価を基に治療方針を決定します。
・血液検査:併発疾患(貧血や腎臓病、肝臓病など)の評価
・尿検査:併発疾患(腎臓病など)の評価
・直腸検査:がんの大きさや広がり、骨盤の中のリンパ節の評価
・レントゲン検査:リンパ節転移、遠隔転移の評価
・超音波検査:リンパ節転移の評価
・CT検査:がんの大きさや広がり、リンパ節転移、遠隔転移の評価
※CT検査はより綿密な治療方針を決定するうえで推奨される検査です

肛門嚢腺癌(赤丸)のCT画像
治療
がんの治療には主に「根治治療(積極的治療)」と「緩和治療」があります。
「根治治療(積極的治療)」とはがんと闘う治療であり、がんをできるだけ体から取り除くことを目的とした治療です。根治治療(積極的治療)は長期生存(一般的には年単位)を目的とした治療であり、がんを治すことができる場合もあります。一方、非常に悪性度の高いがんでは、根治治療(積極的治療)を行ったとしても数カ月程度で亡くなってしまう場合もあります。根治治療(積極的治療)では主に「手術」、「放射線治療」、「抗がん剤治療・分子標的治療」を単独あるいは組み合わせて行います。
一方、「緩和治療」とは、がんによる苦痛を和らげることを目的とした治療です。緩和治療は長期生存を目的とした治療ではなく、たとえ短期間(一般的には月単位)であってもその期間の動物の生活の質を改善するために行う治療です。緩和治療では主に「痛みの治療」、「栄養治療」、「症状を和らげる治療」を単独あるいは組み合わせて行います。
・肛門嚢腺癌の根治治療(積極的治療)
根治治療として手術(腫瘍の切除と必要であればリンパ節の切除)が適応となります。
病理組織検査の結果次第では、術後に放射線治療や電気化学療法、抗がん剤、分子標的治療、免疫療法などを組み合わせることもあります。
・肛門嚢腺癌の緩和治療
腫瘍がすでに遠隔転移している場合、根治治療は適応となりません。
その場合は、痛みの緩和や腫瘍の進行を遅らせる治療(抗がん剤や分子標的治療など)が選択されます。
予後
猫の肛門嚢腺癌の治療で重要なことは手術で完全に腫瘍を取り切ることです。
2019年に報告された論文では、手術で完全に取り切れた場合の生存期間中央値は555日とされています。
一方、完全に取り切れない場合の生存期間中央値は196日と完全に取り切れた場合と比較すると予後が悪くなります。
また、手術できない場合の予後が非常に悪く、多くが数ヶ月以内に亡くなってしまいます。
猫の肛門嚢腺癌は非常にまれであり、まだまだ不明な点が多いですが、当院では手術や電気化学療法、抗がん剤など様々な治療に対応しております。
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