機械/検査

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腹部エコー検査の読影について

獣医師の梶村です。
前回はX線検査の読影について説明しましたが、今回は腹部エコー検査の読影についてお話します。

エコー検査は安全で非侵襲的な検査です。
この検査とX線検査を組み合わせることで、動物の状態をより詳しく、正確に評価できます。
腹部のエコー検査では主に、膀胱、脾臓、腎臓、副腎、肝臓、胆嚢、胃、腸、膵臓などを見ます。
以下にいくつか症例を紹介します。

⑴脾臓の腫瘤
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脾臓の中に黒く抜けている部分があります。
脾臓は正常なら、均一な色をしているのでこれは異常です。
エコー検査では液体が黒い色になります。
よってこれは脾臓内に液体が溜まっている部分があると考えられます。
それは例えば血腫(血の塊)や腫瘍(血管肉腫やリンパ腫)などの可能性があります。

⑵胆泥症
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胆嚢の中には胆汁が溜まっており、正常であれば真っ黒に丸く見えるはずですが、この画像では胆嚢内の半分程が白く見えています。
これは胆泥症と呼ばれるもので、放置しておくと、胆嚢炎、総胆管閉塞、胆嚢粘液嚢腫からの胆嚢破裂などが起こりえます。
ただし胆泥が溜まっていても、全く無症状で過ごせる子もいます。

⑶肝臓腫瘤
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肝臓内に肝臓よりも白い腫瘤が認められます。
結節性過形成(良性)、肝臓腫瘍、転移性の腫瘍などが考えられます。
肝臓は他の腫瘍が転移しやすい臓器です。

⑷膀胱腫瘍
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膀胱内には尿が溜まっており、通常は黒く丸く見えるのですが、この画像では膀胱壁からぼこぼこと白く見える腫瘤が確認できます。
これが膀胱の出口を塞いでしまうと排尿できなくなり、尿毒症であっという間に亡くなってしまいます。

⑸膀胱結石
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黒く見える膀胱内に白い像が認められます。
その下はエコーが届かずに、黒い影(シャドー)になっています。
このようにシャドーを引くものとしては骨や結石などがあり、この画像の場合は膀胱内結石であると判断できます。
 

⑹子宮蓄膿症
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腹腔内で液体が溜まっている臓器は膀胱と胆嚢だけです。
しかしこの画像では膀胱の近くに濁ったような液体が認められます。
通常の子宮はエコーではほとんど分かりませんが、これは子宮内に膿が溜まっていると考えます。
子宮蓄膿症では少しでも早い手術が必要となります。
また他に子宮に水が溜まる病気として、子宮水腫があります。

以上のように、エコー検査は多くの情報を我々獣医師にもたらしてくれます。
また非常に状態の悪い子でも侵襲性が低いので使うことができることと、このエコー検査がなければ診断しにくい病気も多くあります。
高齢になる子は臓器に何かしらの異常があることも多いので、ぜひ一度検査してみましょう。 

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エコー検査中に寝てしまう子もいます(笑)
 

獣医師 梶村

かもがわ動物クリニック