本日の一症例

痒がる、皮膚が赤い/毛が抜ける(脱毛)

皮膚科・耳科

アレルギー性皮膚炎

動物
種類 柴犬
性別 避妊雌
年齢 13歳2ヶ月
地域 京都市山科区
症状/病態 かゆみ、脱毛、皮膚の赤み
考えられる病気 アレルギー疾患、感染性疾患(細菌、真菌、寄生虫)、内分泌疾患など

2年以上前から、皮膚のかゆみが良くならないという主訴で来院された柴犬さんです。

かゆみのせいで、脱毛や皮膚の赤みも目立つようになってしまっています。

下の写真は来院時の皮膚の状況です。

 

 

過去に、抗生剤やステロイドを用いて治療するも中々良くならず、かゆみが

継続してしまっているため原因の特定が重要となります。

 

まずは、感染性の疾患を調べるために各種皮膚検査を行いました。

皮膚検査は、皮膚スタンプ検査(皮膚にガラスやテープを押し当てて細菌や

マラセチアを検出)、抜毛検査(毛の構造や感染物を検出)、ウッド灯検査

(特殊なライトで糸状菌を検出)などを実施しました。

 

検査の結果では、軽度の細菌感染のみ認められました。

皮膚の細菌感染が、かゆみの一因となっている可能性は高いですが、感染の

程度や皮膚の症状が出ている場所の分布、柴犬という犬種なども含めて

考えると細菌感染だけでなくアレルギー疾患の関与も疑われます。

今回、食事アレルギーを調べるための除去食試験の実施は行わなかったため

アレルギーが食事要因か、環境要因かまでは判別できていません。

 

治療は、①細菌感染に対しては抗菌シャンプーの使用、②アレルギー疾患に

よる痒みに対しての痒み止め、③皮膚のバリア機構の強化のための保湿剤の

3つを実施しました。

 

2〜3週間後には皮膚症状の改善が認められ、3ヶ月程度が経過した現在の

皮膚状況が次の写真です。

 

 

皮膚の赤みは消失し、脱毛もほとんど目立たない状況まで回復しました。

毛の状態も、ボソボソした質感から柔らかい毛質に改善していることが分かります。

1日1回の痒み止めの投薬で、痒みもうまくコントロールできており掻くことを

見ることもかなり減ったとのことでした。

今後、症状の悪化が認められる場合には原因のさらなる追及が必要となるため

食事アレルギーとアトピー性皮膚炎の鑑別などを実施していく予定です。

 

かゆみの原因を特定することは非常に重要ですが、状況に応じて最小限の検査で

試験的に治療を実施することで今回の症例のように状況が好転することもあります。

原因不明の痒みでお悩みの方は、ぜひ当院まで一度ご相談ください。

 

診断名

膿皮症(細菌性皮膚炎)

食物アレルギー