本日の一症例

呼吸が荒い(苦しそう)

腫瘍科(ガン)/外科

犬の永久気管開口術

動物
種類 トイプードル
性別 去勢雄
年齢 17歳
地域 京都市
症状/病態 鼻汁・鼻出血による呼吸困難
考えられる病気 軟口蓋メラノーマの鼻腔内浸潤、鼻腔内腫瘍、鼻炎、歯周病など

鼻汁・鼻出血による呼吸困難が認められ、夜も眠ることができないということで来院しました。また、呼吸がしんどいためか自分で食事をすることができず、体重も徐々に減ってきていました。

わんちゃんは、もともと軟口蓋にメラノーマがあり、手術が難しいため、免疫療法による治療を行っていました。

鼻汁や鼻出血の原因としては、一般的には鼻腔内腫瘍や鼻炎、歯周病などが考えられますが、このわんちゃんは軟口蓋にメラノーマがあるため、それが鼻腔内に浸潤している可能性も考えられました。

そのため、気管支鏡により鼻腔内と軟口蓋を確認し、軟口蓋メラノーマによる可能性が高ければ、呼吸状態の改善を目的として、ご家族と相談し、永久気管開口術を行うこととしました。

永久気管開口術は、頚にある気管を一部切除し、皮膚と縫合することで頚のところから呼吸をできるようにする方法で、このわんちゃんのように鼻や喉の病気で呼吸が苦しい場合に行うことがあります。手術を行ったあとは部屋の温度や湿度に気をつけ、ネブライザーや気管開口部の清掃が必要になるため、ご家族のケアが必要となってきますが、呼吸状態は劇的に改善することが多いです。

永久気管開口術は腫瘍の根本的な手術ではないため、なかなか受け入れ難い手術であり、このわんちゃんのご家族もすぐに決断できたわけでなく、かなり悩まれましたが、最終的には手術を受けることとしました。

以下、手術の写真となります。苦手な方はご注意ください。

(写真や動画はご家族のご承諾のもとあげさせていただいております)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軟口蓋にメラノーマが認められ(赤丸)、気管支鏡を行った結果、これが鼻腔内にまで浸潤していました。

 

頚の皮膚を切開し、筋肉を左右に分離することで気管を露出します。

 

左右の筋肉を気管の背側側で縫合すると気管が皮膚側に浮かび上がります。

これを行うことで、皮膚と気管が縫合しやすくなります。

 

気管の一部を切開します。

 

残っている気管と皮膚を縫合して終了です。

 

術後は3〜4時間毎に開口部を清掃し、1日2〜3回ネブライーザーを実施します。

このわんちゃんは、術後から呼吸状態が劇的に良くなり、ぐっすり寝ることができるようになりました(動画1)。

また、術後7日目には自分で水を飲み、ご飯を食べることができるようになり(動画2)、無事退院しました。

動画1 動画2

 

冒頭でもお伝えしたとおり、永久気管開口術は、腫瘍を根本的に治す治療ではなく、あくまでわんちゃんがよりよい生活を送ることができるようになるための緩和手術になります。

そのため、なかなか受け入れ難い手術ではありますが、このわんちゃんのように呼吸が苦しく、食事をできなかったわんちゃんが、楽に呼吸ができるようになり、自分でご飯を食べることができるようになることもあります。

当院では、腫瘍による治療だけでなく、どのようにしたら動物がよりよい生活を送ることができるようになるかを常に考えて治療を行っています。