犬
足のできもの
腫瘍科(ガン)/外科
犬の肥満細胞腫 (後肢断脚)
動物 | 犬 |
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種類 | ラブラドールレトリバー |
性別 | 避妊雌 |
年齢 | 11歳 |
地域 | 京都市 |
症状/病態 | 後肢のできもの |
考えられる病気 | 肥満細胞腫のリンパ管転移、その他腫瘍や炎症 |
後肢に腫瘤(できもの)があるとのことで来院しました。
このわんちゃんは以前、後肢端に腫瘤が認められており、切除の結果、肥満細胞腫と診断されています。
また、鼠径部にあるリンパ節に肥満細胞腫の初期の転移が認められており、膝窩部にあるリンパ節に肥満細胞腫の転移は認められませんでした。
その後は、分子標的薬による治療を継続していましたが、今回、膝窩部付近に腫瘤が認められました。
細胞診の結果、肥満細胞腫と診断されたため、経過より肥満細胞腫のリンパ管転移が疑われました。
腫瘤は筋肉に近く、境界が分かりづらかったので、この腫瘤を完全に切除するには断脚が必要となりました。
断脚を行うと、その後は3本脚での生活となります。
そのため、なかなか受け入れ難い手術ですが、3本脚になったとしても、少し時間はかかりますが、多くの子が歩様できるようになります。
断脚するかどうかご家族と一緒にかなり悩みましたが、このまま放置しておくと、今後肥満細胞腫が筋肉や神経に浸潤することで結果として歩けなくなる可能性があるため、今回は断脚を選択することとしました。
以下、手術の写真となります。苦手な方はご注意ください。
(写真や動画はご家族のご承諾のもとあげさせていただいております)
腫瘍がある位置(赤丸)より距離をとり皮膚を切開します(青線)(写真左:脚の外側、写真右:脚の内側)。
脚の内側を走行する動脈(赤矢印)と静脈(青矢印)を別々に結紮し、切除します。
その後、内側の筋肉を一つずつ切除していきます。
次に外側の筋肉を切除していき、最終的に股関節付近の筋肉を切除すると、摘出されます。
摘出後、残っている筋肉と皮膚を縫合して手術終了です。
術後、止血異常により輸血が必要となりましたが、術後3日目には散歩も行けるようになり(動画)、術後6日目に退院しました。
病理診断は肥満細胞腫で、同時に切除したお腹の中のリンパ節にも転移が認められました。
現在は、歩様および元気食欲にも問題はありませんが、今後その他のリンパ節や肝臓、脾臓への転移が懸念されるため、分子標的薬を使用しながら経過をみていく予定です。
断脚は比較的大きな手術となり、見た目も変わるため、なかなか受け入れ難い手術ですが、断脚することで痛みをとってあげたりすることができ、多くの動物は問題なく生活することができるようになります。
断脚に不安を感じているご家族がいらっしゃいましたら当院にご相談ください。