本日の一症例

びっこをひく

腫瘍科(ガン)/外科

犬の骨肉腫(前肢断脚)

動物
種類 ラブラドール・レトリーバー
性別 去勢雄
年齢 11歳
地域 大津市
症状/病態 左前肢の跛行(びっこをひく)
考えられる病気 関節炎、骨折、骨・関節原発腫瘍など

左前肢の跛行を主訴に来院しました。

院内でも跛行が認められ、左上腕部付近が腫脹しており、触ると痛みが認められました。

レントゲンの結果、骨から発生する腫瘍が疑われましたので、ご家族と相談し、手術(断脚)を行うこととしました。

断脚を行うと、その後は3本脚での生活となります。

そのため、なかなか受け入れ難い手術ですが、今回のように骨に腫瘍が発生している場合、痛みが重度であり、薬ではなかなか痛みを改善できず、痛みを改善させるためには断脚が必要となることが多いです。3本脚になったとしても、少し時間はかかりますが、多くの子が歩様できるようになります。

以下、手術の写真となります。苦手な方はご注意ください。

(写真や動画はご家族のご承諾のもとあげさせていただいております)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切開するラインをマーカーで引いておき、これに沿って皮膚を切開していきます。

 

肩甲骨外側の筋肉(赤矢印)と内側の筋肉(青矢印)を切除し、肩甲骨を剥がしていきます。

 

肩甲骨を剥がしていくと、前肢へいく神経(赤矢印)・動脈(青矢印)・静脈(黄色矢印)が確認できるため、それぞれ別々に糸で縛って、切ります。

 

最後に上腕骨に付着する筋肉を切除すると、摘出されます。

 

筋肉、皮下組織、皮膚を縫合して手術終了です。

 

術後は疼痛管理や起立補助などのリハビリを行います。

このわんちゃんは股関節炎があり、白内障で眼もほとんど見えてない状態でしたが、術後2日目から少しずつ歩けるようになり(動画1)、術後3日目には散歩にも行けるようになり(動画2)、術後4日目に無事退院しました。

動画1動画2

抜糸の際にはまだ正常ではないものの、元気食欲ともに問題なく、歩ける距離もだいぶ長くなっていました(動画3)。

動画3

病理診断は骨肉腫であり、ご家族は痛みの改善のみを希望されたため、今後は抗がん剤などは行わず、ご自宅でゆっくり過ごしてく予定です。

断脚は比較的大きな手術となり、見た目も変わるため、なかなか受け入れ難い手術ですが、断脚することで痛みをとってあげたりすることができ、多くの動物は問題なく生活することができるようになります。

断脚に不安を感じているご家族がいらっしゃいましたら当院にご相談ください。

 

当院では、獣医腫瘍科認定医による腫瘍科専門外来を行なっております。

詳細は下記のリンクをご参照ください。

https://www.kamogawa-ac.jp/cancer-treatment-specialty/

診断名