Cre(クレアチニン)、SDMAの上昇

健康診断の血液検査で「腎臓の数値が少し高いですね」と言われ、不安な気持ちで
帰ってこられる飼い主様は少なくありません。腎臓の働きをみる代表的な血液検査が、
クレアチニン(Cre)・SDMAの2つです。どちらも「腎臓がどれだけ血液をきれいに
できているか」を反映する数値ですが、得意なことがそれぞれ違います。今回は、
クレアチニン・SDMAとは何か、数値が上がる原因、必要な検査、治療について解説します。
Cre、SDMAとは?
クレアチニン(Cre)
クレアチニンは、筋肉が活動するときにできる老廃物です。ほとんどが腎臓でろ過されて尿に
出ていくため、腎臓の働きが落ちると血液中にたまり、数値が上がります。ただし、腎臓の
働きがおよそ4分の3失われるまで基準値を超えにくいことが知られています。また筋肉量の
影響を受けるため、筋肉が落ちた高齢の子や痩せている子では、実際より低く出ることが
あります。
SDMA(対称性ジメチルアルギニン)
SDMAは、体の細胞でタンパク質が分解されるときにできる物質で、主に腎臓から排泄され
ます。筋肉量の影響をほとんど受けないのが特徴です。研究では、SDMAは腎臓の働きが
平均40%ほど低下した段階で上昇し始め、クレアチニンよりも猫では平均約17か月、犬では
平均約9か月早く異常を示したと報告されています。
なぜ両方を測るの?
クレアチニンは長く使われてきた信頼できる指標、SDMAは早期発見と筋肉量の少ない子の
評価が得意な指標です。国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)も、両方を組み合わせて評価
することを推奨しています。
数値が上昇する原因
「数値が高い=慢性腎臓病」とは限りません。原因は大きく次のように分けて考えます。
① 腎臓の手前の問題(腎前性)
脱水や心臓病などで腎臓に届く血液が減ると、腎臓そのものに病気がなくても数値が上がり
ます。原因が改善すれば数値も戻ることが多いタイプです。
② 腎臓そのものの病気(腎性)
慢性腎臓病:数か月~数年かけてゆっくり進行します。特に高齢の猫でとても多い病気です。
急性腎障害:数日単位で急に腎臓の働きが落ちる状態です。中毒(猫のユリ、犬のブドウ・
レーズン、一部の痛み止めなど)、感染症、尿路の感染などが原因になります。
③ 腎臓より後ろの問題(腎後性)
結石や腫瘍などで尿の通り道がふさがると、尿を出せずに数値が急上昇します。
④ 病気以外の要因
筋肉量の多い犬種(グレイハウンドなど)ではクレアチニンが、成長期の子ではSDMAが、
もともと高めに出ることがあります。また、リンパ腫など腎臓以外の病気でSDMAだけが
上がる場合があることも報告されています。
症状
慢性腎臓病の初期は、ほとんど症状がありません。健康診断で偶然見つかることが多い
のはそのためです。進行すると、次のような変化が見られるようになります。
⬜︎ 水をたくさん飲む、おしっこの量が増える
⬜︎ 食欲が落ちる、体重が減る
⬜︎ 吐く回数が増える
⬜︎ 毛づやが悪くなる、口臭が強くなる
⬜︎ 元気がない(貧血を伴うこともあります)
一方、急に元気や食欲がなくなった、おしっこが出ていないという場合は、急性
腎障害や尿道閉塞の可能性があります。様子を見ずに、すぐにご連絡ください。
診断のための検査
◯再検査
脱水や食事の影響で一時的に上がることもあるため、体調が落ち着いた状態で日を
改めて測り直します。SDMAが基準値(14 µg/dL)を超えている場合は、2週間以上
あけて再検査し、高い状態が続いているかを確認します。
◯尿検査
尿比重(おしっこの濃さ)は、腎臓が尿を濃縮できているかをみる大切な指標です。
あわせて、尿中のタンパク量を調べる尿蛋白/クレアチニン比(UPC)も測ります。
尿蛋白についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
◯血圧測定
腎臓病と高血圧はお互いを悪化させる関係にあります。高血圧は目や心臓、脳にも
影響するため、腎臓の数値が高い子では血圧の確認が欠かせません。
◯血液検査(ほかの項目)
BUN(尿素窒素)、リン、カリウム、貧血の有無などを確認します。猫では甲状腺
ホルモンの測定もおすすめします。
◯画像検査(エコー・レントゲン)
腎臓の大きさや形、結石、尿の通り道のつまりなどを確認します。
治療
治療の目的は「数値を下げること」ではなく、原因に対処し、腎臓に残っている
働きを守ることです。
急性腎障害や尿道閉塞の場合は、点滴や閉塞の解除など、原因に対する治療を急いで
行います。早く治療を始めるほど、腎臓の働きが回復する可能性が高まります。
慢性腎臓病は、残念ながら失われた腎臓の働きを元に戻すことはできません。
しかし、適切な治療で進行をゆるやかにし、元気に過ごせる時間を延ばす
ことが期待できます。ステージに合わせて、次のような治療を組み合わせます。
⬜︎腎臓病用の療法食:リンやタンパク質の量を調整した食事です。
⬜︎尿蛋白を減らすお薬:尿蛋白が多い子では、腎臓への負担を減らすお薬を使います。
⬜︎血圧を下げるお薬:高血圧がある場合は、目や脳、心臓を守るためにも治療します。
⬜︎脱水の予防:進行した子では、皮下点滴で水分を補うことがあります。
⬜︎症状に合わせた治療:リンの吸着剤、吐き気止め、食欲増進剤、貧血の治療などを
必要に応じて行います。
まとめ
クレアチニンとSDMAは、腎臓の働きを知るための大切な数値です。慢性腎臓病は初期に
症状がほとんどなく、気づいたときには進行していることも少なくありません。
だからこそ、症状が出る前に数値の変化に気づくことが、その子との時間を守ることにつながります。
・健康診断で「腎臓の数値が高め」と言われた
・基準値内だけれど、前回より数値が上がってきている
・最近、水を飲む量やおしっこの量が増えた気がする
このような場合は、追加の検査も含めて一度しっかり評価してあげましょう。数値の意味や
今後のことを、飼い主様と一緒に整理しながらご説明します。他院で受けた検査結果を
お持ちいただいてのご相談も歓迎です。
当院の健康診断についてはこちらをご覧ください!

