GPT(ALT)、GOT(AST)の上昇
GPT、GOTは共に肝臓の逸脱酵素という、細胞内から細胞外にこぼれ出ることによって
血中濃度が上昇する酵素であり、肝臓の細胞が障害を受けたり、肝臓の細胞そのものが
破壊されたりした時に上昇するため、肝臓の障害の程度を表す指標とされています。
ただし、あくまで肝細胞の障害の指標であり、肝臓の機能を示すものではありません。
◯GPTの上昇
GPTは、ほとんどが肝臓(肝細胞の細胞質)に分布していますが、腎臓や心臓、筋肉にも
分布している酵素です。肝臓は、栄養素の代謝、胆汁の産生と分泌、有害物質の分解、
血液凝固因子の産生、ブドウ糖の貯蔵など様々な働きをもちます。GPTの基準値は、
犬で17~78 IU/L 、猫で22~84 IU/L ですが、この基準値を上回ると、肝臓をはじめ
GPTが分布する臓器のいずれかが障害を受けていると考えられます。GPTは、肝臓の腫大や
肝細胞の膜の透過性が亢進することで上昇しますが、軽度の肝障害でも高値を示すことが
あります。
GPTが上昇する原因として以下のものがあげられます
・肝臓の疾患(慢性および急性の肝炎、胆管肝炎、猫の肝リピドーシスなど)
・中毒(化学薬品の誤飲など)
・薬物(プレドニゾロンやデキサメタゾン、麻酔薬、フェノバルビタールの投与など)
・食事(質の悪いフード、開封後時間のたったフード、ジャーキーなどのおやつ)
・腫瘍
・猫の甲状腺機能亢進症
・ショック
・うっ血性心不全
・筋疾患
・猫の膵炎
GPTの上昇がみられた場合は、その上昇が肝細胞障害によるものなのかどうかを明らかに
するため、他の肝酵素と合わせて総合的に判断する必要があります。
◯GOTの上昇
GOTは肝臓(肝細胞のミトコンドリア内)だけでなく、心臓や筋肉、腎臓、膵臓、赤血球などに
広く分布しています。
GPTとともに肝臓の疾患の指標として用いられますが、心筋疾患や筋疾患などの指標にも
用いられます。GOTは、基本的に激しい肝臓の障害がないと上昇しませんが、
GOTの上昇と同様に、肝臓の腫大や肝細胞の膜の透過性が亢進することによっても
上昇することがあります。GOTの基準値は、犬で17~44 IU/L 、猫で18~51 IU/L で、
肝細胞が障害を受けると血液中に酵素が流れ出し、数値が上昇します。
GOTが上昇する原因として、以下のものがあげられます。
・肝臓の疾患(慢性および急性の肝炎、胆管肝炎、猫の肝リピドーシスなど)
・中毒(化学薬品の誤飲など)
・薬物(プレドニゾロンやデキサメタゾン、麻酔薬、フェノバルビタールの投与など)
・溶血
・腫瘍
・猫の甲状腺機能亢進症
・ショック
・うっ血性心不全
・筋疾患
・猫の膵炎
GOTの高値が見られた場合、すぐに肝細胞障害と判断するのではなく、筋疾患の
可能性も考えることが必要です。犬では、全力で駆け回った後に筋肉の細胞が
障害を受けることによりASTが上昇することもあるので注意が必要です。
GPTやGOTの上昇が見られた場合、当院ではレントゲン撮影やエコー検査などの検査により
詳しく病変部を探します。場合によっては肝臓の保護剤の処方や、肝臓をサポートする
フードへの切り替えなどをお勧めしています。