軟部組織肉腫

病態
軟部組織肉腫とは間葉系組織(支持組織)に由来し、類似する生物学的挙動を持つ多種多様な腫瘍の総称です。
線維肉腫、血管周皮腫、末梢神経鞘腫、粘液肉腫、脂肪肉腫などが含まれます。これらの腫瘍は共通した特徴を持っているため、これらを総称して軟部組織肉腫と言われます。
軟部組織肉腫は皮膚や皮下に発生し、局所浸潤性が比較的強いですが、転移は比較的まれです(ただし、転移率は病理検査でのグレードにより異なり、グレード1あるいは2では20%未満なのに対し、グレード3では40〜50%程度が転移します)。転移部位としては肺が多いです。

下腿部皮下に発生した軟部組織肉腫の肉眼写真
症状
皮膚あるいは皮下に発生するため、ご家族がしこりに気づいて来院される場合が多いです。しこりが大きくなり破れると舐めたり、四肢に発生する場合は跛行(びっこ)などの症状が認められる場合があります。
診断
軟部組織肉腫は針生検(細い針をさして細胞を採取する検査)で診断可能なこともありますが、炎症との区別が難しかったり、針生検ではグレードの評価ができないため、状況に応じて組織生検(できものの一部を採取する検査)が必要となります。

針生検で採取された軟部組織肉腫
ステージングおよび併発疾患の評価
軟部組織肉腫と診断した場合、がんの大きさや広がり、リンパ節転移、遠隔転移(肺などへの転移)の評価を行います。これをステージングといいます。
同時に併発疾患がないかどうかも評価します。
これらの評価には以下の検査を組み合わせて行い、評価を基に治療方針を決定します。
・血液検査:併発疾患(貧血や腎臓病、肝臓病など)の評価
・尿検査:併発疾患(腎臓病など)の評価
・レントゲン検査:遠隔転移の評価
・CT検査:がんの大きさや広がり、リンパ節転移、遠隔転移の評価
※軟部組織肉腫の場合、腫瘍がかなり大きく、周囲に広がっている場合には、CT検査が推奨されます

上記肉眼写真のCT画像(赤丸:軟部組織肉腫、青矢印:血管、黄色矢印:膝蓋骨)
治療
がんの治療には主に「根治治療(積極的治療)」と「緩和治療」があります。
「根治治療(積極的治療)」とはがんと闘う治療であり、がんをできるだけ体から取り除くことを目的とした治療です。根治治療(積極的治療)は長期生存(一般的には年単位)を目的とした治療であり、がんを治すことができる場合もあります。一方、非常に悪性度の高いがんでは、根治治療(積極的治療)を行ったとしても数カ月程度で亡くなってしまう場合もあります。根治治療(積極的治療)では主に「手術」、「放射線治療」、「抗がん剤治療・分子標的治療」を単独あるいは組み合わせて行います。
一方、「緩和治療」とは、がんによる苦痛を和らげることを目的とした治療です。緩和治療は長期生存を目的とした治療ではなく、たとえ短期間(一般的には月単位)であってもその期間の動物の生活の質を改善するために行う治療です。緩和治療では主に「痛みの治療」、「栄養治療」、「症状を和らげる治療」を単独あるいは組み合わせて行います。
・軟部組織肉腫の根治治療(積極的治療)
根治治療として手術が適応となります。
また、病理組織検査の結果次第では、術後に放射線治療や抗がん剤、分子標的薬などが適応となる場合もあります。
・軟部組織肉腫の緩和治療
腫瘍がすでに遠隔転移している場合は、根治治療は適応となりません。
その場合は、痛みの緩和や腫瘍の進行を遅らせる治療(免疫療法など)が選択されます。
また、腫瘍からの出血や痛みなどで動物の生活の質が落ちるようであれば、遠隔転移があったとしても緩和治療として手術が適応となる場合もあります。
予後
グレード1やグレード2の場合、手術で完全に切除できれば根治が期待できます。
また、手術で完全に切除できなくても、術後に放射線治療を行うことで根治が期待できます。
一方で、グレード3の場合、手術で完全に切除できたとしても、再発の可能性や転移する可能性があるため、予後には注意が必要です。ただし、グレード3であっても、検査上明らかな転移が認められない場合は根治治療(積極的治療)を行うことで、年単位の生存が可能な場合も多いです。
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