病気紹介

猫の肥満細胞腫(皮膚、脾臓)

病態

猫の肥満細胞腫は皮膚または脾臓においてよくみられる腫瘍で、潜在的に悪性であり、原因は肥満細胞が正常範囲を超えて、増殖し腫瘍化したことによります。

肥満細胞とは結合組織内に広く分布する細胞で、その細胞質内に顆粒(ヒスタミンなど)を有するのが特徴で、免疫系の関与や組織の恒常性を保つ働きがあると言われています。

 

猫の肥満細胞腫は犬の肥満細胞腫と異なる面が多く、猫においては、皮膚型と内臓型(特に脾臓)の2タイプに分かれます。

 

皮膚型は、数ミリから米粒大のしこりが皮膚にみられ、大きなものでは潰瘍化(炎症あり)する場合もあります。単発から数か所に及ぶことがあり、主に頭部、四肢、腹部が好発部位です。腫瘍の摘出手術で予後良好(再発が少ない)のことが多いですが、皮膚に5か所以上の腫瘍がある場合は、脾臓からの病変を疑い、予後不良となります。

 

内臓型は主に脾臓に起こりやすく、元気消失、食欲不振、体重減少、被毛粗剛、腫れた脾臓が胃を圧迫することによる嘔吐がみられます。症状がでるまで数か月または年単位を要する場合もあり、中高齢の猫に多くみられます。

 

 

診断

問診、視診、触診をします。

 

他に必要な検査として、

胞診 (過去のブログ参照)

腫瘤の細胞ををスタンプしたり、針生検により採取し、 腫瘍細胞を顕微鏡で確認することで診断がつきます。

 

・血液検査

全身状態のチェックや、疑われる類病の可能性を消去していくために行います。 内臓型の場合、血液塗抹で血液中の肥満細胞を確認することがあります。

 

・エコー(超音波)検査、レントゲン検査

脾臓の腫大などを確認します。

 

 

治療

皮膚にできた腫瘍は、外科的に切除します。猫においては、犬の肥満細胞腫で指標としているグレード分類(予後判定など)は適応されず、腫瘍は真皮内に限局していることが多く、マージン(切除範囲の大きさ)の基準もありませんが、十分な考慮をして切除します。切除した組織は病理検査をして、腫瘍の確定診断や切除が十分であったかを確認します。

また切除が困難な場所においては、当院では温熱療法やレーザー治療を行っています。

 

脾臓に病変が見られる場合、外科手術(脾臓摘出)をすることが第一選択となります。

他に化学療法を行うこともありますが、残念ながら猫では効果がはっきりと証明されていないものもあります。

最近では、新しい治療方法として分子標的薬も使用するようになってきました。

 

皮膚にできる肥満細胞腫については、日ごろから体を触ってチェックすることで早期発見ができます。もし何か異常を見つけたら、様子をみるのではなく、早めに相談するようにしましょう。