本日の一症例

口の中のできもの

腫瘍科(ガン)/外科

犬の口腔内メラノーマ(下顎骨切除)

動物
種類 ミニチュアダックスフンド
性別 避妊雌
年齢 12歳
地域 向日市
症状/病態 口の中の腫瘤(しこり)
考えられる病気 炎症、腫瘍(メラノーマ(高悪性度・低悪性度)、扁平上皮癌、歯原性腫瘍など)

口の中に腫瘤(しこり)があるとのことで来院されました。

腫瘤は左下顎第四前臼歯〜第一後臼歯付近に存在し、黒色で比較的境界明瞭でした。

針生検(細い針をさして細胞を採取する検査)ではメラニン顆粒を含む細胞が採取されたため、悪性黒色腫と診断しました。

CT検査では一部骨への浸潤が疑われましたが、明らかな転移は認められなかったため、下顎骨を一部含めた手術を行うこととしました。

※口腔内メラノーマは粘膜や骨への浸潤が強いため、腫瘍のみを切除するだけでは再発する可能性が極めて高いため、骨を含めた手術を行う必要があります。

骨を切り取る手術は、「痛そう」、「見た目が変わりそう」、「食べれなくなりそう」など様々な理由によりなかなか受け入れ難い手術ですが、痛みに関しては手術後数日程度であり、適切な痛み止めにより多くの動物が許容できる程度の痛みです。また、手術をする範囲にもよりますが、見た目の変化は軽度な場合も多く、多くのわんちゃんが術後数日でご飯を食べることができるようになります。一方、手術をせずにそのまま放置しておくと、下の写真のように痛みが強くなり、見た目も変わり、最終的には口からご飯を食べることができなくなってしまいます。当院ではこのようなことを手術前にご家族にしっかり説明し、手術を行うかどうか考えてもらうようにしています。

 

以下、手術時の写真となります。苦手な方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前述したとおり、口腔内メラノーマは粘膜や骨への浸潤が強く、腫瘍のみの切除では再発する可能性が高いため、腫瘍から1cm程度離れた周囲の正常な粘膜(青線)と骨を一緒に切除する計画を立てました。

骨の内部には血管と神経が通っており、骨を削る際に損傷すると大出血を起こす可能性があります。そのため、CTで血管の位置を確認し、骨を削る際に血管と神経のみを残して、糸で縛る必要があります。

摘出後の写真です。

縫合後の写真です。

術後の写真です。

下顎骨の部分的な切除では顔貌の変化は認められず、食事も普通に行うことができます。

 

病理診断はメラノーマでした。手術後も大きな問題はなく、元気に過ごしてくれています。

今後は定期的に再発や転移の検査を行なっていく予定です。

顎の骨の手術は比較的大きな手術となり、見た目も変わるため、なかなか受け入れ難い手術ですが、手術することで痛みをとってあげたり、それ以上の見た目の変化を防ぐこともでき、多くの動物は問題なく生活することができるようになります。顎の骨の手術に不安を感じているご家族がいらっしゃいましたら当院にご相談ください。

 

当院では、獣医腫瘍科認定医による腫瘍科専門外来を行なっております。

詳細は下記のリンクをご参照ください。

https://www.kamogawa-ac.jp/cancer-treatment-specialty/

診断名

犬の悪性黒色腫(メラノーマ)