犬
口の中のできもの
腫瘍科(ガン)/外科
犬の口腔内メラノーマ(吻側両側下顎骨切除)
動物 | 犬 |
---|---|
種類 | ミニチュアダックスフンド |
性別 | 去勢雄 |
年齢 | 推定17歳6ヶ月 |
地域 | 京都市伏見区 |
症状/病態 | 口の中の腫瘤(しこり) |
考えられる病気 | 炎症、腫瘍(メラノーマ(高悪性度・低悪性度)、扁平上皮癌、歯原性腫瘍など) |
口の中に腫瘤(しこり)があるとのことで来院されました。
腫瘤は左下顎切歯部位に存在し、黒色でした。
針生検(細い針をさして細胞を採取する検査)ではメラニン顆粒を含む細胞が採取されたため、悪性黒色腫と診断しました。CT検査では骨が溶けていましたが、歯周病もあったため、腫瘍が原因か歯周病が原因かは不明でしたが、明らかな転移は認められませんでした。
このわんちゃんはかなり高齢であり、副腎皮質機能亢進症(クッシング)という病気も持っていたため、ご家族もかなり手術を行うかどうか迷われていましたが、手術を行う場合のメリットとデメリット、手術を行わない場合のメリットとデメリットをお話し、最終的には手術を行うこととしました。
今回はCTとしこりの見た目を参考に吻側(頭側)の両側の下顎骨を含めた手術を計画しました。
※口腔内メラノーマは粘膜や骨への浸潤が強いため、腫瘍のみを切除するだけでは再発する可能性が極めて高いため、骨を含めた手術を行う必要があります。
骨を切り取る手術は、「痛そう」、「見た目が変わりそう」、「食べれなくなりそう」など様々な理由によりなかなか受け入れ難い手術ですが、痛みに関しては手術後数日程度であり、適切な痛み止めにより多くの動物が許容できる程度の痛みです。また、手術をする範囲にもよりますが、見た目の変化は軽度な場合も多く、多くのわんちゃんが術後数日でご飯を食べることができるようになります。
一方、手術をせずにそのまま放置しておくと、痛みが強くなり、見た目も変わり、最終的には口からご飯を食べることができなくなってしまいます。当院ではこのようなことを手術前にご家族にしっかり説明し、手術を行うかどうか考えてもらうようにしています。
以下、手術の写真となります。苦手な方はご注意ください。
(写真はご家族のご承諾のもとあげさせていただいております)
前述したとおり、口腔内メラノーマは粘膜や骨への浸潤が強いため、腫瘍のみの切除では再発する可能性が高いため、腫瘍から1cm程度離れた周囲の正常な粘膜(青線)と骨を一緒に切除する計画を立てました。
腫瘍や向かう血管と神経を糸で縛ります。
摘出後の写真です。この後、縫合して手術終了となります。
術後1日目と15日目の写真です。下顎骨の部分的な切除では顔貌の変化は認められず、食事も普通に行うことができます。
病理診断はメラノーマでした。腫瘍はしっかり切除できており、同時に摘出したリンパ節にも転移は認められませんでした。現在はメラノーマワクチンを使用しながら経過観察しており、その後は定期的に再発や転移の検査を行なっていく予定です。
顎の骨の手術は比較的大きな手術となり、見た目も変わるため、なかなか受け入れ難い手術ですが、手術することで痛みをとってあげたり、それ以上の見た目の変化を防ぐこともでき、多くの動物は問題なく生活することができるようになります。顎の骨の手術に不安を感じているご家族がいらっしゃいましたら当院にご相談ください。
当院では、獣医腫瘍科認定医による腫瘍科専門外来を行なっております。
詳細は下記のリンクをご参照ください。