犬
びっこをひく/足をあげる、歩けない
整形外科(骨・関節の病気)
膝蓋骨内方脱臼(グレード3)、前十字靭帯部分断裂
動物 | 犬 |
---|---|
種類 | トイ・プードル |
性別 | メス |
年齢 | 4歳10ヶ月 |
地域 | 京都市北区 |
症状/病態 | 足をあげる(びっこを引く) |
考えられる病気 | 関節脱臼(膝蓋骨脱臼、股関節脱臼など)、骨折、靭帯損傷(前十字靭帯断裂など)、関節炎、外傷、肢間炎(足裏皮膚炎)、異物が刺さっている、その他 |
診断
1ヶ月前にわんちゃんが乗っているベビーカーが倒れてしまい、そこから右後ろ足をよく上げているとのこと。
視診にて、右後ろ足の間欠的挙上を認めた。
身体検査では、右側の膝蓋骨内方脱臼(グレード3)を確認。
また、右後ろ足の脛骨圧迫試験・脛骨前方引き出し試験(前十字靭帯の損傷を確認する試験)を実施したところ、膝関節の明らかな不安定性は認められなかった。
膝関節の炎症反応の確認のため、レントゲン検査を実施。
膝関節において、fat pad sign(関節内の炎症を示唆する)(赤丸)が認められた。
その他に脱臼や骨折は認められなかった。
以上の検査から、膝蓋骨内方脱臼グレード3および前十字靭帯部分断裂による挙上と診断した。
治療
安静と痛み止めなどで一時的には改善したが、何度も症状が再発したため、今回CT検査、外科手術による整復を実施することとなった。
手術内容(下記の術式を組み合わせた)
・関節包縫縮術(関節包や膝蓋骨に付着する靭帯を縫い合わせる)
・内側支帯開放(膝蓋骨を内方に引っ張っている筋肉の一部の切断)
・滑車溝造溝術(膝蓋骨が滑る溝を深くする)
・関節外法(断裂した前十字靭帯を太い糸で代替する;人工靭帯)
以下手術の写真となります。苦手な方はご注意ください。
術前の滑車溝(浅い)
↑炎症産物による突起(青丸)が認められた
術後の滑車溝(深い)
術前(左)・術後(右)のCT画像
内方に脱臼していた膝蓋骨(青丸)を、手術で正常の位置に整復した(赤丸)
今では右後ろ足を上げることもなくなり、経過は良好です。
このわんちゃんのように、何度も症状が再発する場合や、内科療法では改善しない場合は外科手術による整復を実施することもあります。
よく足を上げる、歩き方が変など、愛犬のことでご心配なことがあれば一度当院までご相談ください。