本日の一症例

皮膚のできもの

腫瘍科(ガン)/外科

犬の肥満細胞腫(リンパ管造影)

動物
種類 トイプードル
性別
年齢 3歳
地域 京都市
症状/病態 皮膚の腫瘤(しこり)
考えられる病気 炎症、肥満細胞腫など

皮膚に腫瘤(しこり)があるとのことで来院されました。

腫瘤は左第三乳腺付近(赤丸)に存在し、3mm程度の大きさで、境界明瞭でした。
針生検(細い針をさして細胞を採取する検査)では顆粒を含む細胞が採取されたため、肥満細胞腫と診断しました。
肥満細胞腫はこれくらい小さくても悪性で、リンパ節に転移しやすい腫瘍ですが、最近の報告では所属リンパ節(腫瘍から最も近いリンパ節)とセンチネルリンパ節(腫瘍が最初に転移するリンパ節)が異なる可能性があることが分かってきました。

特に今回できた位置は腋窩リンパ節(脇にあるリンパ節 青丸)、鼠径リンパ節(股にあるリンパ節 黄色丸)のどちらに転移するか分かりませんでした。さまざまな方法がありますが、今回はCT検査でリンパ節を染める方法を用いてセンチネルリンパ節を特定することとしました。

CT検査の結果、鼠径リンパ節が白く染まり(黄色丸)、センチネルリンパ節であることが分かったため、肥満細胞腫とあわせて鼠径リンパ節切除を実施することとしました。

 

以下、手術時の写真となります。苦手な方はご注意ください。(写真の左側が動物の頭側になります)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは鼠径リンパ節の切除から行います。

正常なリンパ節は大きさが小さく、探すのが難しいですが、リンパ節は血管沿いにあるため、血管の周囲を探索して見つけます。

摘出した鼠径リンパ節(大きさは5mmほどで正常でした)。

次に肥満細胞腫の切除にうつります。

肥満細胞腫は、以前は腫瘍から2〜3cm程度離れた周囲の正常な皮膚と深部の筋膜を含めて切除することが推奨されていましたが、現在、腫瘍の大きさが小さい場合は腫瘍の直径と同程度の周囲の正常な皮膚と深部の筋膜を含めた切除で問題ないと考えられています。

そのため、本症例では腫瘍から1cm程度離れた周囲の正常な皮膚(青線)と深部の筋膜を含めて切除することとしました。

切除後の写真です。

縫合後の写真です。

 

病理診断は肥満細胞腫で、グレード分類はグレード2、低グレードでそこまで高いグレードではありませんでした。

また、c-kit遺伝子検査で変異も認められず、鼠径リンパ節にも転移はみられませんでした。

本症例のように全例でCTを用いてセンチネルリンパ節を特定する必要はありませんが、どこに転移するか判断が難しい場合には一つの方法として有用と感じています。

 

当院では、獣医腫瘍科認定医による腫瘍科専門外来を行なっております。

詳細は下記のリンクをご参照ください。

https://www.kamogawa-ac.jp/cancer-treatment-specialty/

診断名

犬の肥満細胞腫