犬
皮膚のできもの
腫瘍科(ガン)/外科
犬の肥満細胞腫
動物 | 犬 |
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種類 | 雑種 |
性別 | 避妊雌 |
年齢 | 7歳 |
地域 | 京都市 |
症状/病態 | 皮膚の腫瘤(しこり) |
考えられる病気 | 炎症、肥満細胞腫、毛芽腫など |
後肢に腫瘤(しこり)があるとのことで来院されました。
腫瘤は左後肢大腿部内側に存在し、8mm程度の大きさで、境界明瞭でした。
針生検(細い針をさして細胞を採取する検査)では顆粒を含む細胞が採取されたため、肥満細胞腫と診断しました。
肥満細胞腫はこれくらい小さくても悪性でリンパ節に転移する可能性があります。
また、病理によるグレード分類とc-kitという遺伝子の変異の有無が予後に関わってきます。
治療の主体は手術になるため、肥満細胞腫と同時にリンパ節を切除することとしました。
以下、手術時の写真となります。苦手な方はご注意ください。
肥満細胞腫は、以前は腫瘍から2〜3cm程度離れた周囲の正常な皮膚と深部の筋膜を含めて切除することが推奨されていましたが、現在、腫瘍の大きさが小さい場合は腫瘍の直径と同程度の周囲の正常な皮膚と深部の筋膜を含めた切除で問題ないと考えられています。
そのため、本症例では腫瘍から1cm程度離れた周囲の正常な皮膚(青線)と深部の筋膜を含めて切除することとしました。
摘出後の写真です。
縫合後の写真です。
病理診断は肥満細胞腫で、グレード分類はグレード2、低グレードでそこまで高いグレードではありませんでした。
しかし、c-kit遺伝子検査でエクソン8という部位に変異が認められ、同時に切除したリンパ節に初期の転移が認められました。
c-kit遺伝子に変異があると予後が悪いと考えられていますが、最近の報告ではエクソン8という部位の変異は比較的予後がよいと考えられています。
現在、分子標的薬を使用しており、定期的に再発や転移がないか経過をみていく予定です。
当院では、獣医腫瘍科認定医による腫瘍科専門外来を行なっております。
詳細は下記のリンクをご参照ください。